第2章 原子力開発利用の進展状況
5 原子力船の研究開発

 政府は,昭和55年4月に原子力委員会が決定した「原子力船研究開発の進め方」の方針等を踏まえ,日本原子力船開発事業団が「むつ」の開発に加えて原子力船の開発に必要な研究を行うことができるよう同事業団を日本原子力船研究開発事業団と改め,同事業団に研究開発機能を付し,併せて昭和59年度末までに同事業団を他の原子力関係機関に統合する旨定めることを主な内容とする,日本原子力船開発事業団法の一部改正法案を第93回国会に提出した。同法案は昭和55年11月26日成立し,同月29日施行された。

 一方,原子力船「むつ」の開発については,佐世保港において「むつ」の修理が進められるとともに,新定係港の問題を解決するための努力がなされた。

 佐世保港における「むつ」の修理については,昭和55年8月の本格的遮蔽改修工事の開始以来,長崎の地元関係三者(長崎県知事,佐世保市長,長崎県漁連会長)と約束した修理期限(昭和56年10月)を厳守するため,最大限の努力がなされたが,日本原子力船研究開発事業団は「むつ」の修理を完了するためにはどうしても修理期間を延長せざるを得ないとの判断に至った。
 このため科学技術庁及び日本原子力船研究開発事業団は昭和56年8月,地元関係三者に対し,「むつ」が修理を終えて佐世保港を出港する期限を昭和57年8月31日まで延長することを要請した。地元関係三者は,この要請について,議会等それぞれの関係機関に諮り,これを受け入れることを決定して,昭和56年10月,科学技術庁及び日本原子力船研究開発事業団に対し,この旨回答した。これによって佐世保港における「むつ」の修理期限は,昭和57年8月31日まで延長されることとなった。
 また,「むつ」の新定係港の問題については,昭和55年8月,科学技術庁から青森の地元関係三者(青森県知事,むつ市長,青森県漁連会長)に対し,青森県の大湊港を「むつ」の定係港として再度使用することの可能性について検討を要請した。以来,地元関係三者との間で鋭意折衝が行われたが,その結果,科学技術庁及び日本原子力船研究開発事業団と地元関係三者の間に,「むつ」の新定係港を青森県内の外洋に設置することとし,むつ市関根浜地区を候補地として調査,調整のうえ決定し,可及的速やかに建設すること,「むつ」は新定係港が完成するまでの間は,大湊港に停泊すること,などの合意が得られ,昭和56年5月,科学技術庁長官,日本原子力船研究開発事業団理事長及び青森の地元関係三者の五者で会談を行い,これらの合意事項を共同声明として発表した。これによって「むつ」の新定係港の問題の解決について基本的な方向が得られることとなった。
 現在,この共同声明に基づき,日本原子力船研究開発事業団が関根浜地区の立地に関する調査を鋭意進めているところである。


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