第4章 国際関係活動
4 研究開発に関する国際協力等

(2)多国間協力

① 安全研究に関する協力
 日米原子力安全研究協力協定及び日独科学技術協力協定の下における協力として各々基本的に合意されていた大型再冠水試験計画は,日本,米国及び西ドイツの三国間プロジエクトとして行われることになった。このため,昭和53年5月には,東京において専門家会合が開催され,協力内容,協力方法等について協議が行われた。この三国間プロジエクトの協力協定については,昭和54年6月,仮署名を行い,昭和55年4月,正式に署名し協力が開始された。
 また,日本原子力研究所は,スウェーデンのストウドビク研究所材料試験炉R2を使用して,軽水炉標準燃料の破損に関する研究を行う「オーバーランプ計画」(加圧水型炉(PWR)標準燃料対象)及び「インターランプ計画」の後を継いだ「デモランプ計画」(沸とう水型炉(BWR)標準燃料対象)を通じ,各種の試験を行った。なお,オーバーランプ計画は昭和55年6月をもって終了した。

② 高速増殖炉に関する協力
 動力炉・核燃料開発事業団は,西ドイツカールスルーエ研究協会(KFK)/インタアトムとの間において,昭和46年以来高速増殖炉に関する基礎的研究開発分野での協力を実施してきたが一方,KFK/インタアトムは,昭和52年7月仏国原子力庁(CEA)と高速増殖炉協力協定を締結した。この関係により日独協力に,フランスが参加することになり,昭和53年6月21日,東京において日独仏高速増殖炉協力協定の調印が行われ,昭和54年6月第1回日独仏高速炉会議が日本で,また,昭和55年10月第2回日独仏高速炉会議がフランスで開催された。

③ 開発途上国に対する協力
 我が国は,昭和53年8月25日「原子力科学技術に関する研究開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に加盟した。同協定は,昭和47年に発効し,アジア,太平洋地域の国際原子力機関(IAEA)加盟国間の原子力科学技術,特に放射線,アイソトープの利用に関する研究開発及び訓練の推進,協力を目的とするものであり,現在,12ヵ国が加盟している。
 昭和54年10月,我が国で開催された第1回RCA政府専門家会合及び引続き昭和55年3月27日から4月2日までマニラ(フィリピン)で開催された第2回政府専門家会合において,当面のRCA活動として「食品照射計画」及び「アイソトープ・放射線の工業利用計画」を強力に推進していくことが,加盟国間で合意された。
 「食品照射計画」については,我が国は昭和54年9月に東南アジア諸国の実情を把握するため,調査団を派遣するとともに引き続いて同年10月には,各国から,本分野の専門家を招いて,ワークショップ(国際研修会)を開催し,積極的な協力を行った。これら一連の準備作業を経て昭和55年8月に「食品照射計画」(3ヵ年,23万6千ドル)が正式にスタートし,我が国は拠出国として資金の全額を拠出するとともに専門家の派遣,研修員の受入れ等を通じて本計画に参加することとなった。なお,同計画の今後の具体的協力計画を審議するため,昭和55年9月2日から5日までインドネシアのジャカルタにおいて第1回の科学調整委員会が開催され,我が国からも3名の専門家が出席した。
 一方,非破壊検査,放射線プロセス利用及び原子力機器の補修等を内容とした「アイソトープ・放射線の工業利用計画](5ヵ年,800万ドル)は国連開発計画(UNDP)及び加盟国政府により資金が賄われるものであり,昭和56年8月の正式スタートを目標に現在はUNDPの資金援助により情報の収集,トレーニングコースの開催等を内容とした準備活動が行われている。
 我が国は,本準備活動に対して,昭和55年7月には放射線プロセスに関するワークショップを開催する一方,数回にわたり,専門家を各国に派遣し,各国の実情調査を行うなど,積極的な協力を行っている。
 さらに我が国は,現在,放射線,ラジオアイソトープ分野の協力を医療面へも拡大していくことを検討中であり,他方,将来は,協力の分野を例えば研究炉の利用開発といった放射線,ラジオアイソトープ利用以外の分野にも拡大していくことの可能性を検討しており,そのための調査及び広く今後のRCA活動に対する我が国の協力のあり方を検討するため,昭和55年9月には約2週間にわたり,政府,産業界,研究機関,大学等広範囲の専門家からなる調査団を東南アジア5ヵ国に派遣し各国の実情調査を行った。


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