第4章 国際関係活動
4 研究開発に関する国際協力等

(1)二国間協力

① 日米原子力安全研究協力
 昭和48年に,軽水炉に関して,科学技術庁原子力局と当時の米国原子力委員会〔現在は,原子力規制委員会(NRC)〕で始められた本協力は,順調に進展しこの成果を受けて昭和51年3月に協力分野が高温ガス炉に拡大され,更に昭和52年7月には高速増殖炉をも対象範囲に含めることとなった。
 この協力の特色は,従来の単なる情報交換にとどまらず日米双方が互いの研究開発計画を密接に調整し合い,効率的な研究開発の推進を目指している点にある。
 また,本協力の一環として,日本原子力研究所と米国原子力規制委員会との間で,昭和51年2月にLOFT計画協力協定,同年3月にNSRR計画/PBF計画協力協定が締結され,これに基づき,米国LOFT計画(冷却材喪失事故条件での核熱水力学的及び構造的現象に関する総合試験),PBF計画(出力・冷却材流量不整合,冷却材喪失事故,反応度事故その他の条件の下での燃料破損に関する実験)には我が国から常駐研究員が派遣されており,我が国NSRR計画(反応度事故条件の下での燃料破損に関する実験)には,米国研究員が東海村に長期派遣され,研究に参加している。更にこれらの協力計画に関しては,その実施計画の検討に互いに代表を参加させており,その場で実質的な調整が行われている。
 なお,LOFT計画協力協定は昭和55年2月,NSRR計画/PBF計画協力協定は同年3月に,それぞれ4年間有効期間を延長した。
 一方,昭和54年4月,TMI事故の教訓を踏まえて園田外務大臣がシュレシンジャー米国エネルギー長官に対し原子炉の安全性に関する日米共同研究の拡大を提案したが,昭和54年5月の大平総理大臣とカーター大統領との会談において同提案に対する合意が成立し,「原子炉の安全性及び信頼性を高めるため共同研究を拡大すること」につき意見の一致をみた。更に,昭和54年6月,東京サミット期間中に行われた大平・カーター会談において,原子力安全研究に関する日米協力を拡大強化するため,両国政府間の事務レベル専門家会合を開催することとなり,同年11月にワシントンにおいて,同専門家会合が開催された。
 この結果,小破断時の冷却材喪失事故及びこれに関連する原子炉過渡状態の研究等4つの協力分野が選定され,現在具体的な協力内容について協議が行われている。

② 日米高速炉協力
 高速増殖炉開発の進展に伴ない,協力範囲を拡大した米国エネルギー省(DOE)と動力炉・核燃料開発事業団との間の協力協定が,昭和54年1月,東京で締結された。この新協定に基づき5つの分野に分かれて,それぞれ技術情報及び技術者の交換が頻繁に行なわれてきている。

③ 日米規制情報交換協力
 両国における規制の体系,その考え方及び経験について,詳細かつ迅速な情報交換を行うために,昭和49年度に始められた本協力は,科学技術庁原子力安全局,資源エネルギー庁と米国原子力規制委員会との間で進められている。特に,昭和54年3月末に発生した米国スリー・マイル・アイランド(TMI)原子力発電所事故に関しては,重要な情報が本協力に基づき米側より迅速に送付されてきている。

④ 日米核融合協力
 日米核融合協力は,昭和52年9月,当時の宇野科学技術庁長官とシュレシンジャーエネルギー長官との会談で合意され,事務レベルにおいて協力方策に関し協議された。
 その後,昭和53年5月の日米首脳会談における福田総理大臣の再提唱を経て,同構想を具体化するための作業部会が昭和53年9月及び11月に東京及びワシントンでそれぞれ開催された。同作業部会で,核融合をはじめ,各プロジェクト毎に,分科会が設けられ,協力テーマ,協力方法等について意見交換が行われた。
 これらの協議の結果を踏まえ,昭和54年5月2日「エネルギー及びこれに関連する分野における研究開発のための協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(基本協定)が締結された。
 この基本協定と昭和54年8月24日の日米核融合調整委員会に関する日米政府間の交換公文により(1)基本協定に基づいて行う核融合分野の調整及び実施のための核融合エネルギーに関する調整委員会の設置,(2)核融合エネルギーに関する調整委員会によって取り扱われる分野(①ダブレットIIIを用いた共同研究,②交流計画,③プラズマ物理学に関する共同研究,④共同計画)が合意された。更に基本協定と昭和54年8月24日のダブレットIII計画に関する日米政府間の交換公文の合意に基づき,昭和54年8月28日,日本原子力研究所と米国エネルギー省との間でダブレットIIIプロジェクト研究協力協定が締結され,米国カリフォルニア州にあるトカマク型装置であるダブレットIII試験装置を用いたD型断面を有するトカマク・プラズマの試験に関する協力が開始された。
 本協力に係わる各分野の具体的な計画については,昭和54年11月に開催された第1回日米核融合調整委員会(米国・サンジェゴで開催)及び昭和55年4月に開催された第2回日米核融合調整委員会(東京で開催)で協議され,トカマク型プラズマ試験装置を用いた共同研究,研究者の相互派遣,ワークショップの開催等が,積極的に実施されている。

⑤ 日独原子力安全研究協力
 昭和49年10月に締結された日独科学技術協力協定に基づいて,軽水炉安全研究について,両国の協力が進められている。昭和50年4月以来,両国コーディネーター(科学技術庁原子力局技術振興課長及び西ドイツ研究技術省軽水炉技術課長)間で,協力の具体的態様の検討のために,第1回(昭和50年4月,ボン),第2回(昭和51年3月,東京)のコーディネーター会合を開催する等により協議が続けられた結果,合意が得られ,第2回日独科学技術協力合同委員会(昭和51年6月,ボン)での了承を受けて,同年7月から協力が開始された。現在,情報交換を主体とした協力が行われている。
 また,昭和52年6月に東京で開催された第3回コーディネーター会合において,西ドイツ側から提案されたPNS計画(カールスルーエ原子力センター:出力・冷却材流量不整合及び冷却材喪失事故条件の下での燃料挙動に関する研究)とNSRR計画(日本原子力研究所)との間の研究協力は,昭和55年1月に協力協定が締結され,協力が開始された。

⑥ 日独高温ガス炉協力
 前述第2回合同委員会において,日独科学技術協力の新分野として高温ガス炉を加えることを我が国から提案し,これに応えて西ドイツ側から現状調査のための調査団が日本に派遣された。
 この結果,協力の具体的内容について,日本原子力研究所とユーリッヒ研究所との間で詳細に検討することとした。両機関による協議の結果,両国での協力が有意議であるとの結論に達し,昭和52年4月に開催された第3回合同委員会において,「高温ガス炉パネル」の設置が合意され,双方の連絡者として,科学技術庁原子力局技術振興課長及び西ドイツ研究技術省新型炉開発課長が指名されて,協力の具体化が進められることとなった。
 第1回「高温ガス炉パネル」は,昭和52年6月に西ドイツユーリッヒ研究所で開催され,そこでの合意を受け,昭和52年10月に日本原子力研究所と西ドイツユーリッヒ研究所との間において,「研究協力覚書」が締結され,情報交換を主体とした協力が開始された。
 更に,より密接な協力を行うために昭和54年2月「研究開発協力協定」が両者間で締結された。
 また,昭和55年3月に西独で第3回パネル会合が開催さtL,利用系分野の研究協力を一層促進することとし,原子力製鉄技術研究組合を日本側の窓口として情報交換等の研究協力が行われることとなった。

⑦ 日仏規制情報交換協力及び安全研究協力
 昭和51年4月に来日したドルナノフランス産業研究大臣と佐々木科学技術庁長官との間の大臣会議で,原子炉規制,軽水炉安全研究での両国協力について積極的に検討することが合意された。これを受けて,規制に係る協力に関しては,昭和54年3月,科学技術庁原子力安全局及び通商産業省資源エネルギー庁とフランス産業省原子力施設安全本部との間で,情報交換を内容とする協力の実施が合意された。また,安全研究に係る協力についても同月,科学技術庁原子力局とフランス原子力庁との間で協力の形態,分野等が合意され,現在,協力の実施細目について協議を行っている。

⑧ 日仏放射線化学協力
 昭和44年に開始された日本原子力研究所と,フランス原子力庁との間の,放射線化学の分野での協力は順調に続けられたが,昭和55年5月協定期限が満了し,終了した。現在協力内容等を変更し,新たな協定を締結することについて協議中である。

⑨ 日英高速炉協力
 高速増殖炉分野での英国との協力は,昭和46年以来,日本原子力研究所と動力炉・核燃料開発事業団及び英国原子力公社との間で続けられており,昭和50年には5年間の延長がなされたが,その後更に,我が国における高速増殖炉開発の進展を反映して昭和51年6月,本協定の技術範囲に原子炉プラントを入れる等の拡大が行われた。

⑩ 日ソ原子力協力
 我が国とソビエト連邦との原子力分野の協力は,政府間のものは,昭和48年に締結された日ソ科学技術協力協定の枠内で行うこととしており,第1回協力委員会が昭和53年1月東京において開催され,本協力が合意された。
 本合意を受け,昭和53年7月及び昭和54年3月,それぞれモスクワ及び東京において暫定専門家会議が開催され,核融合及び高速増殖炉に関する昭和54~55年度の協力計画案が作成された。
 さらに昭和54年9月,モスクワにおいて第2回協力委員会が開催され,本協力計画が確定された。
 なお,この第2回協力委員会の開催に先立って,高速増殖炉に関するセミナーが,前記協力計画案に基づいて昭和54年7月モスクワにおいて開催され,核融合に関するセミナーが同年11月に東京とモスクワでそれぞれ開催された。
 他方,民間による交流の一環として,昭和52年11月18日に日本原子力産業会議とソ連原子力利用国家委員会との間で相互交流を中心とした民間協定が締結されている。

⑪ 日加重水炉協力
 重水炉に関する協力については,動力炉・核燃料開発事業団とカナダ原子力公社との間において情報交換を主体とした協力が,昭和46年9月から順調に進められている。

⑫ 日豪ウラン濃縮共同研究
 オーストラリアにおける商業規模のウラン濃縮工場建設の可能性についての基礎的な分析に関して,オーストラリアとの間で共同研究が行われている。


目次へ          第4章 第4節(2)へ