第3章 原子力をめぐる国際動向と我が国の立場

2 INFCE後の諸問題

 INFCEの結果を受けて,核不拡散に関する国際間の具体的な政策や措置が,今後多国間や二国間の協議の場における検討を経て実施されていくことになるが,原子力委員会はこのINFCE後の諸問題のうち国際制度に関する多国間協議についての重要事項を審議し,我が国の適切な対応策の確立に資することを目的として,関係行政機関及び学識経験者等よりなる「ポストINFCE問題協議会」を昭和55年4月に設置した。

 〔多国間協議]
 INFCE後の諸問題のうち国際的な制度に関しては,国際プルトニウム貯蔵(IPS),国際使用済燃料管理(ISFM)及び核燃料の供給保障の3つの事項の検討がある。
 IPSについては,昭和53年12月からIAEAの専門家会合が開始され,IPS構想のより具体的なシステムについての検討が行われている。我が国としては,IPSを重要な核不拡散手段の一つと考え,国際協調を図りつつも,我が国のプルトニウム平和利用が阻害されることのないよう対応していくこととしている。その際,現行保障措置体制との関係についても慎重な配慮を払う必要がある。
 ISFMについても,昭和54年6月以降,IAEAの専門家会合において検討が行われている。我が国としては,長期的に使用済燃料を貯蔵する意志はないが,世界的にみた場合,再処理能力を上まわって使用済燃料が発生することも事実であり,ISFMシステムを検討することは有意義であると考えている。
 天然ウラン,濃縮ウラン等の供給保障の問題については,INFCEの結果を受け,これをさらに十分に検討するためIAEA理事会の諮問機関として「供給保証に関する委員会(CAS)」が,設置され,昭和55年9月第1回会合が開催された。このCASの審議においては,核物質等が核拡散防止上の考慮に合致した形でより予見可能で長期的に保証される方策について,十分な討議が行われることとなる。
 また,保障措置の有効性の確保については,現在IAEAにおいて検討が進められるとともに国際協力計画も進められている。我が国としては,これらの作業に積極的に参加し,保障措置の有効性を高めることに貢献するとともに,そのために必要な研究開発を積極的に進める必要がある。

 〔二国間協議〕
 INFCE後の諸問題のうち,我が国にとって今後の二国間の問題としては,日米,日豪等の原子力協力協定改正,東海再処理施設の運転に関する日米共同決定の改正,太平洋ベースン使用済燃料暫定貯蔵構想のフィージビリティ調査などの交渉があげられる。
 日米原子力協力協定については,米国が昭和53年に核不拡散法を制定したことに伴い,我が国に現行の日米原子力協力協定をより厳しい規制権を含むものに改正することを要求してきているものであり,昭和54年2月に非公式協議を行った。我が国としては,今後とも米・ユーラトム協定締結交渉の動きを注目しつつ核拡散防止のための国際的努力に積極的に協力しながら我が国の原子力平和利用の促進を図るとの基本的立場に立って慎重に対処していく必要がある。
 日豪原子力協力協定については,昭和52年の豪州の核不拡散の観点からのウラン輸出政策等の変更に伴い我が国に改訂を要求してきているものであり,これまでに,3回交渉を行ってきているが,この協定についても,上記日米原子力協力協定の場合と同様,現在交渉中の豪・ユーラトム協定等の進捗を見極めつつ対応していくこととしている。
 東海再処理施設に関する運転問題については,昭和52年9月に,2年間,99トンの枠内での運転に関して日米間で共同決定を行った。その後昭和54年9月,INFCEの期間延長にあわせて,東海再処理施設の運転期間の延長を行ったが,さらに,昭和55年4月には,99トンの再処理がまだ終了していないこと,核不拡散のための研究開発をいましばらく継続する必要があること及びINFCEの結果の消化に十分な時間が必要であることなどを理由として,昭和56年4月末まで運転期間を延長することとした。なお,二度目の延長の際,東海再処理施設に付設されるプルトニウム転換施設については,混合転換法により建設に着手することとされた。昭和56年5月以降の再処理問題については,INFCEの結果及び核不拡散のための技術開発の成果を考慮して日米間で協議していくこととなるが,INFCEで得られた成果を十分に活用し,再処理に関する我が国の立場について米国の理解を得ていく必要がある。
 太平洋ベースン使用済燃料暫定貯蔵構想については,我が国の再処理政策からすれば,このような暫定貯蔵の必要性はないが,世界的な核不拡散に貢献するとの観点から,昭和55年7月,今後2年間にわたり日米共同でフィージビリティ調査を実施することに合意した。


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