第3章 原子力をめぐる国際動向と我が国の立場

3 NPT再検討会議

 NPTは,発効の5年後にこの条約前文に掲げられた目的と条約規定の実現を確保するため締約国による条約の運用を検討するための会議(NPT再検討会議)を開催することを規定している。これに基づき,昭和50年5月にジュネーブでNPT第1回再検討会議が開催され,保障措置の充実,原子力資材等の供給確保,核物質防護のための国際的な取極の勧奨,核軍縮,第2回再検討会議の1980年開催提案等を盛り込んだ最終宣言が採択された。
 次いで第2回再検討会議は,昭和55年8月〜9月にジュネーブにおいて75カ国が参加して開催され,核不拡散,核軍縮及び保障措置等原子力平和利用問題についての検討が行われた。この会議においては,主として非同盟諸国側から,核兵器国による核軍縮の進展が不十分であること,平和利用の面で供給国がNPT加盟国に対する原子力資材,技術等の供給について,助成するどころか,むしろ規制を強めていることなどの強い不満が表明された。特に核軍縮努力を定めたNPT第6条の実施振りの評価について核兵器国と非同盟諸国の意見対立が調整できず,このため昭和60年に第3回再検討会議を開催する旨を含む手続的文書が採択されたに止まり,実質的な内容を含む最終宣言をとりまとめるに至らなかった。しかしながら,NPTを中心とする核不拡散体制自体に対する基本的な批判はみられず,むしろ,NPT体制の維持,強化の重要性と必要性が再確認されたことの意義は大きいと思われる。
 なお,我が国代表は,この会議において核保有国に対し,核軍縮を強く呼びかけるとともに,NPTを基礎とした核不拡散体制強化の重要性を強調した。
 また,現行のIAEA保障措置制度の意義については,参加国間で基本的に認識されており,今後IAEAにおける国際的な諸制度の検討の場において,具体的原子力平和利用の促進のあり方について引き続き検討が行われていくことになると考えられる。我が国は,原子力の平和利用についてNPTに基づくIAEAの現行保障措置を基礎としつつ核不拡散と平和利用の両立を図っていくという考え方に立って,今後,国際的な動向に対処していく必要がある。


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