第3章 原子力をめぐる国際動向と我が国の立場

 原子力の開発利用を推進していくためには,核不拡散の強化をめぐる国際的動向や近年とみに活発化しつつある国際協力等の国際関係に適切に対応していく必要がある。
 特に,国際的な核不拡散の強化の動きは,同時にそれが原子力の平和利用に対する制約につながる可能性もあり得るため,我が国の原子力政策にも大きな影響を及ぼすものである。
 エネルギー資源に乏しい我が国は,核燃料サイクルを国内において確立しプルトニウムの利用を図ることを原子力政策の基本として,これまでウラン濃縮,再処理などの核燃料サイクル関係施策並びにプルトニウムを利用するための高速増殖炉及び新型転換炉の開発等を進めてきた。
 我が国においては,これらの原子力開発利用は平和目的に限ることを旨として進めており,同時に,国際的には,当初より我が国と米国,英国等との二国間協定に基づき,国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受け入れてきた。その後,核兵器の不拡散に関する条約(NPT:昭和45年3月発効)を昭和51年6月に批准したことに伴い,IAEAとの間に保障措置協定を締結するとともに国内保障措置制度の確立を図り,同条約下での義務の忠実な履行等によって,我が国の原子力の平和利用は国際的信頼を得るに至っている。
 しかし,インドの核実験を契機とする米国カーター大統領の政策等の核不拡散強化の国際的動向は,日米再処理交渉,日加原子力協力協定の改正などの形で我が国の原子力開発利用に対しても大きな影響を及ぼしてきている。
 このような中で,核不拡散問題に関して昭和52年10月から2年余にわたって開催された国際核燃料サイクル評価(INFCE)においては,保障措置等の核不拡散手段を講ずることにより,原子力の平和利用と核不拡散は両立し得るという我が国の主張を基本的には反映させることができた。
 今後,これらの情勢の展開を踏まえつつ,国際的な協議・交渉に我が国が適切に対処していくためには,現行保障措置制度を核不核散達成の基礎に置きつつ,我が国自らが保障措置技術の改良等を積極的に進めることにより核不拡散体制の強化充実を図っていくことが不可欠であり,かかる努力を基礎としてこそ我が国の原子力の平和利用が自主性を保つた形で進められるものである。
 国際間におけるもう一つの重要課題である国際協力については,原子力先進国の一員である我が国の技術,資金,人材等を提供し,核融合などの巨大かつ困難な研究開発のリスクの分担及び効率的な推進を図り,もって国際社会に貢献するという観点から,従来より積極的に推進してきたところであり,これら研究協力を一層強化する必要がある。また,我が国は,開発途上国における原子力開発利用の推進に貢献することが国際的に期待されており,我が国としては,核拡散防止を担保しつつこれらの国との原子力技術協力・研究協力に応分の役割を果たしていく必要がある。


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