第Ⅰ部 総論
第3章 核不拡散をめぐる国際的動向

 国際的な核不拡散強化の動きの中で,米国においては,昭和53年3月,「1978年核不拡散法」が成立し,各国に大きな影響をもたらした。また,昭和52年10月に発足した「国際核燃料サイクル評価(ⅠNFCE)」作業が積極的に進められている。
 一方,我が国にあつては,日米再処理交渉をはじめ,日加及び日豪原子力協力協定の改訂交渉が行われる等核不拡散をめぐる国際的動きは,ますます活発化した。
 原子力委員会は,昭和52年8月15日,  「原子力平和利用と核不拡散の両立をめざして」と題する原子力委員会委員長談話を発表したが,これは我が国が原子力基木法に基づき原子力の開発利用を平和目的に限ることとしていること,更に非核三原則を国是として堅持してきていることを踏まえ,核兵器廃絶に対する願いと,我が国の原子力平和利用の理念に対する不動の決意を示したものである。同時に,核不拡散それ自体が,原子力の平和利用を妨げるものであつてはならないこと,恒久平和の理念と,それを達成するためのあらゆる努力を前提とするならば,核兵器の不拡散及びその将来における廃絶と原子力平和利用は両立しうるとの考えを明らかにしたものである。
 原子力委員会としては,この考えに基づき,国際社会への貢献と我が国の原子力平和利用の促進に努めてきており,新長期計画においても,今後ともこのことを国際場裡において,一層積極的に主張し,各国のコンセンサスを得るよう努めることとした。また9INFCEに積極的に参加し,核不拡散のための新たな国際的秩序の形成に積極的に貢献するほか,より効果的な保障措置技術の研究開発,核物質防護のための国内体制の一層の強化を図ることも重要な課題である。
 また,特に近年,核不拡散との関連において,原子力に関する重要技術の国際間移転は,とみに制約されてきており,安易な導入期待は許されなくなつてきている。今後,単に技術水準において先進国に遅れをとることを防ぐのみならず,国際協力を有効に進め,また前述の核不拡散に関する我が国の基本方針にのつとつて,機器の輸出,開発途上国への技術援助等が可能となるまでに,我が国の原子力技術と関連産業を発展せしめるためにも,原子力の研究開発における自主性を確立していくことが必要である。


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