第8章 放射線利用
1 放射線利用の動向

(2)農業ヘの利用

 農林水産業関係の試験研究における放射線利用は,利用分野が広範であり,照射研究(品種改良,食品照射,放射線重合の利用),トレーサー利用研究(生理生態研究,施肥農薬施用法の改良,地下水流動機構の解明),放射化分析利用研究(極微量元素の検出・定量等)等が国立試験研究機関を中心として進められている。昭和51年度における研究開発の状況は以下のとおりである。
 作物の品種改良における利用としては,農業技術研究所放射線育種場を中心として,ガンマ線による突然変異の誘発,育種技術の開発改良等が行われた。育種技術面では,従来のガンマ線照射だけでなく中性子照射による育種法に関する予備的実験を行った。

 トレーサー利用は,農業研究における放射線利用の草分けの分野である。
 その内容は広範にわたり,農林水産生物及び病原菌,害虫,病原ウイルスの生理生態に関する研究,施肥法,農薬施用法の改良等の分野で不可欠の方法となっている。昭和51年度は,トレーサー利用による酒類の品質の向上及び製造法の合理化についての研究,水資源の高度利用を図るため,人工地下水かん養によって強化された地下水を貯留させて,それを自由にコントロールする方式を確立するためのアイソトープ地下水貯留コントロール装置の試作開発等を行った。
 放射化分析の分野では,根室沿岸のシロサケの回遊追跡法としてアクチバブルトレーサー法が有用であることを実証した。


目次へ          第8章 第1節(3)へ