第6章 新型炉と核融合の研究開発
(参考)諸外国の動向

(4)核融合

 核融合の研究開発における世界のすう勢は,昭和44年頃から新しい局面を迎え,特にトカマク型を中心とする低又は中間ベータ値トーラス系装置は,今後プラズマ加熱法の技術開発やベータ値を高めるなどの改良発展により,臨界プラズマ達成の見通しを立て得る段階に達している。

 米国,ソ連,フランス等における数多くの中規模トカマク型装置によって得られたこれまでの研究成果に基づき,トカマク型装置によって臨界プラズマを実現し得るとの見通しが一般的となった。
 このような判断にたち,米国,ソ連及びユーラトムにおいて次の段階の大型のトカマク型装置の建設又は計画が進められている。
 これらのうち,臨界プラズマ条件をやや下回る条件を目標とした規模のものとしてソ連のT-10が昭和59年7月に米国のPLTが昭和50年11月に稼働した。これらの装置により臨界プラズマ達成のための有力な資料が得られるものと期待されている。
 臨界プラズマ条件の達成を目途とする計画としては,米国のTFTR,ユーラトムのJET,ソ連のT-10Mなどの設計ないし検討が行われており,また一部は製作に着手している。これらは,臨界プラズマ条件の実証を目的とするばかりでなく,更に進んで実際にD-T反応による燃焼のための大型トカマク装置で,装置完成時期はTFTRが昭和56年,JETが昭和57年を予定している。T-10Mは,超電導コイルを用いる大型の装置であり,完成時は昭和55年頃と予想されている。
 世界のすう勢から判断すると,当面の目標である臨界プラズマを最も早く達成する可能性のあるものは,トカマク型装置であって世界の核融合研究開発の主流となっており,これに次いで非軸対称性装置,高ベータ・プラズマ装置の研究開発が平行して進められている。これら磁場閉込めとは別に,レーザー核融合がようやく物理学的諸問題を検討できる実験段階に到達してきたことも近年の一つの進歩と言えよう。


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