2 二国間協力

 我が国は,核燃料,原子炉設備等の人手を図るとともに,情報の交換,専門家の交流,共同研究等を進め,我が国の原子力平和利用の推進に役立てるため,以下のとおりの協定を締結している。

 また,情報の交換,専門家の交換,研究者,技術者の訓練等の協力を進めるため以下の各国と公文を交換している。

(1)米国

 米国との間には,原子力平和利用について広範な協力をするため,昭和43年に原子力協力協定を締結したが,原子力の実用化が進展したのに伴い,濃縮ウラン等の核燃物質の供給に関して協力関係を発展させる必要が生じてきた。このため,本協定を改正する議定書の締結について昭和47年8月以来米国と交渉を行ってきた結果昭和48年3月ワシントンでこの議定書の署名が行われ,12月21日に発効した。
 本議定書による主な改正点は,次のとおりである。
① 我が国は,協定に基づき,昭和48年末までに着工される発電用原子炉(総設備容量約2,000万kW)に必要な濃縮ウランを米国から入手することができるととになっていたが,我が国の原子力発電計画の進展に伴い,これを拡大する必要が生じたために,昭和49年以降に着工が予想される発電用原子炉(設備容量約4,000万kW)に必要な濃縮ウランをも入手できるように改めた。
② 米国から我が国に移転される濃縮ウランに関し,供給保証すること,原子炉を特定すること,供給形式を売却でなく役務提供に限定すること,料金を米国内のものと同一とすること等の規定があったが,これらの供給条件については協定中とくに規定することなく当事者間の契約に委ねることに改めた。
③ 保障措置については,米国による保障措置の実施権を第1義的なものとしていたのを,現実の保障措置の実施状態にあわせてIAEAの保障措置の適用を原則とすることに改めた。
 動力炉・核燃料開発事業団と米国原子力委員会との間においては,液体金属冷却高速炉に関する技術情報の交換と協力が引き続き行われた。
 日本原子力研究所と米国原子力委員会を引きついだエネルギー研究開発庁との間で情報交換の取決めの更新がなされた。
 また,科学技術庁原子力局,通商産業省資源エネルギー庁と米国原子力委員会の間で原子炉の安全研究,規制問題に関して情報交換を行うこととした。

(2)カナダ

 日本原子力会議が,昭和48年6月4日及び5日,オタワにおいて開催され,我が国からは,井上原子力委員会委員長代理が代表となり,カナダ側は,カナダ原子力公社(AECL)総裁J.L.グレイ氏らが参加した。
 会議においては,両国の原子力発電の現況及びAECLと動力炉・核燃料開発事業団との重水炉についての情報交換等について意見交換が行われた。
 また,エネルギー鉱山資源省との間で核燃料資源の需給見通しについて会議がもたれたほか,カナダ原子力管理委員会(AECB)と,原子力施設の安全性及び放射性廃棄物の処理について意見交換を行った。

(3)フランス

昭和49年1月,ユーロディフ社と我が国電力会社9社との間で,昭和55年から昭和64年まで毎年1,000トン―SWUの濃縮ウランの供給について覚書が交換され,これによりフランスから1万トン―SWUの濃縮ウランの供給が受けられることとなった。
 日本原子力研究所とフランス原子力庁との間においては,放射線化学及び材料試験炉に関する情報交換を引き続き行った。

(4)イタリア

 イタリアとの間では,従来から原子力の平和利用についての協力が,人的交流等の形で行われてきたが,この協力関係をさらに発展させるため,両国政府間の取決めを締結したいとの要望がイタリア側から出され,そのための交渉を行ってきた。
 この結果,昭和48年10月26日,ローマにおいて原子力の平和利用についての協力のための書簡を交換した。この書簡交換は,両国政府が科学的及び技術的情報の交換,専門家の交流,研究者及び技術者の相互訓練等の方法により原子力の平和利用についての協力を発展させ,容易にするよう努力すること等を規定しており,今後の協力促進のための基本的な枠組としての性質を有するものである。

(5)スウェーデン

 スウェーデンとの間においても,昭和48年2月に原子力の平和利用についての協力のための書簡を交換し,これに基づき,昭和49年1月には,ABアトムエネルギ社理事長及び工業省研究開発局長を原子力委員会が招へいし,原子力開発についての意見交換を行ったのをはじめ,情報交換,専門家の交流を進めている。

(6)ソ連

 ソ連との間では,昭和48年10月10日,田中首相訪ソの際,科学技術協定が締結され,原子力の分野における協力は,当面,この協定の枠内で実施することとし専門機関による専門家の交換,情報交換等による研究協力を進めることが可能となった。政府間における協力の促進を図るため,ソ連の研究開発の実情を調査することを目的として,政府調査団を昭和49年12月ソ連へ派遣した。
 また,昭和48年6月及び昭和50年1月に日本原子力産業会議派遣の原子力視察団及び調査団が訪ソし,ソ連の原子力事情を調査した。一方,昭和49年1月,ソ連原子力視察団10人が訪日し,我が国の原子力関係者との懇談等を行うなど日ソの交流も一段と活発化してきた。

(7)英国

 英国との間では,核物質や原子力資材の供給を受けているほか,専門家の交流,情報交換等が行われ,また,日本原子力研究所及び動力炉・核燃料開発事業団と英国原子力公社との間で液体金属冷却高速炉に関する情報交換が引き続き行われた。

(8)オーストラリア

 オーストラリアとの間では,昭和47年7月に原子力協定が発効し,我が国の電気事業者と相手国業者との間で天然ウランの供給契約の締結が行われている。昭和49年には,訪豪した田中首相とウイットラム首相の間で
① 1976~86年の既契約天然ウラン9,000ショートトンの供給
② 1986~2000年については,日本の需要に応じることを考慮
③ 日豪ウラン濃縮フィジビリティスタディを開始する
 ことが合意された。

(9)西ドイツ

 西ドイツとの間では,動力炉・核燃料開発事業団と,カールスルーエ原子力研究センターとの間で,高速炉に関する協力が行われているが,ベルギー,オランダ等の間ともこの協力の枠を通じて,情報交換等の協力が行われている。また,昭和49年10月8日,日独科学技術協力協定が締結され,その中で協力分野として「原子炉の安全性研究」と「原子力船の開発」がとりあげられており,昭和50年4月に安全性の第1回の専門委員会が開かれた。

(10)韓国

 韓国との間では,軽水炉燃料照射試験,高速炉系解析法等について研修生を受け入れ,安全審査等について専門家を派遣したほか,情報交換等の協力を行った。

(11)ブラジル

 ブラジルとの間では,昭和48年5月原子力委員長を招へいし,意見交換を行ったが,昭和49年9月17日,訪問した田中首相とカイゼル大統領との間で原子力協力の強化が確認され将来の協力が望まれている。


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