2 多目的高温ガス炉の研究開発

 エネルギー需要の飛躍的な増大に対し,エネルギー資源の乏しい我が国では,その海外依存度がますます高まる傾向にある。したがって,準国産エネルギーとも言うべき原子力エネルギーを電力のみならず,プロセス熱,プロセス蒸気等いろいろな分野へ多目的に利用し,核熱エネルギーの直接利用の効率化と多様化を図り,海外依存度の極めて高い化石燃料への依存状況から脱却することが必要となっている。
 このためには,炉心出口温度1,000°Cの多目的高温ガス炉を開発することが必要であり,我が国では,日本原子力研究所において,この多目的高温ガス炉に関する開発研究が進められている。
 設計に関しては,以下のように進められてきた。
 昭和44年度  実験炉及びその熱利用を対象とした試設計
 昭和45年度  第1次予備設計
 昭和46年度  第2次予備設計
 昭和47年度  計算コード類の開発整備,第2次予備設計を基礎とした「工学的安全系の系統設計」 「大型多目的高温ガス炉システムの試設計」
 昭和48年度  実験炉の基本概念設計〜49年度前半
 昭和49年度後半 多目的高温ガス実験施設の概念設計〜50年度前半
 伝熱流動の研究に関しては,昭和47年度末に完成した大型高温ガスループを用いて,昭和48年度には温度1,OOO°C,圧力40kg/cm2という高温ガス炉条件のもとに240時間にわたる連続運転に成功した。昭和49年度にも引き続き順調に試験,運転が行われたほか高温燃料体試験部,高温高圧配管試験部を試作し,ガスループに接続して試験を行った。
 燃料材料の研究に関しては,被覆粒子燃料の高温長期加熱試験,アメーバ効果加速度実験等の耐熱性に関する試験を行ったほか,炭化ケイ素からの核分裂生成物(FP)放出実験,被覆層の強度測定,黒鉛中のFP拡散実験等を行い,各種の成果を得たが,昭和49年度は材料試験炉(JMTR)が一時期動かなかったことに伴ない,各種照射試験に若干の遅れをみた。
 金属材料については,高温ガス炉特有の化学環境並びに照射環境の作用下における強度や耐食性の特性を中心として研究を実施した。
 黒鉛材料については,ギルソナイト系等方性黒鉛等の照射後試験を行い,照射量と照射温度の関係のデータが得られた。また,高温腐食試験として照射後試料について,水蒸気による腐食反応実験を継続するとともに,ヘリウム循環式中圧腐食試験装置の製作を進めた。
 今日までの基礎的研究の地道な積上げによる成果を評価し,研究の次段階としての実験炉建設について具体的に検討しうる技術的時期に達したと判断し,昭和50年度には,多目的高温ガス実験炉建設についてのチェックアンドレビューを行うことを予定するなど,高温ガス炉の開発を今後一層強力に推進していくことが必要である。
 また,製鉄技術については,日本鉄鋼協会が中心となって開発が進められてきたが,昭和48年度より通商産業省工業技術院において「高温還元ガスによる直接製鉄技術研究開発」(6年計画)が大型プロジェクトとして推進されている。


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