2 核兵器不拡散条約(NPT)に基づく保障措置

 NPTは,核戦争の可能性をなくすことを目的として,1970年3月に発効した。その主な内容は,
① 核兵器国は,核兵器を他国に移譲せず,また,その製造について非核兵器国を援助しない。
② 非核兵器国は核兵器の受領,製造をせず,製造のための援助を受けない。
③ 非核兵器国はIAEAと協定を締結し,国内の平和的な原子力活動にあるすべての核物質について保障措置を受入れる。
 である。
 本条約の発効に伴い,IAEAは保障措置の実施方法等について検討していたが,1971年4月,IAEA理事会において,NPT保障措置モデル協定(INFC IRC/153)が承認された。現行の保障措置との主な相違点は
① 保障措置の対象となるものは,従来は協力協定に基づき移転された核物質等であったが,NPTでは非核兵器国の平和的な原子力活動にあるすべての核物質である。
② NPT下では各国とも核物質管理制度(国内保障措置制度)を制定,維持することが義務づけられ,IAEAはこの制度の結果を検証する方法で査察を実施する。

(1)各国の動き

 このモデル協定に基づき,IAEAは,NPT締約国との間に保障措置協定締結のための交渉を行っており,ユーラトム加盟7ヵ国(ベルギー,西ドイツ,イタリア,ルクセンブルグ,オランダ,デンマーク,アイルランド)フィンランド,ノールウェー等の57ヵ国との間で保障措置協定の交渉を終了した。
 昭和50年5月10日現在,NPT締約国93ヵ国,NPT署名未批准国15ヵ国である。NPT署名未批准国のうち主なものは,エジプト,日本,トルコ等である。
 主なNPT未締約国はフランス,中国,インド,ブラジル,イスラエル,スペイン,南アフリカ,アルゼンチン,パキスタン等である。
 また,昭和50年5月,NPTに基づきNPTを見直すための再検討会議がジュネーブで開かれ,核兵器拡散の防止と原子力の平和利用の推進を具体化する旨の宣言が採択された。

(2)我が国の動き

 我が国は昭和45年(1970年)2月,NPTを署名するにあたり
① 核兵器における軍縮が促進されること。
② 我が国を含む非核兵器国の安全保障が効果的に措置されること。
③ この条約下での我が国とIAEAとの保障措置協定が,他の国又は他の国のグループと比して,不利なものであってはならないこと。
 等の強い関心を有する旨の政府声明を発表した。
 我が国は他の国又は他の国のグループとの平等性の見通しを得るため予備交渉という形で昭和47年6月以降5回にわたって交渉を重ねてきた。
 これらの予備交渉を通じて我が国の核物質の計量・管理制度の事業者からの機能的独立性及び技術的有効性が他の国及び他の国のグループ(ユーラトム)と同等なものであれば,それら他の国及び他め国のグループと同様の保障措置協定を締結し得ることについて原則的了解が成立していたが,去る2月に行われた予備交渉でこれらの了解事項を盛り込んだ協定案が作成された。
 このような経緯をふまえ,第75回通常国会に核兵器不拡散条約の批准案件を提出したが,審議未了となり,継続案件となった。


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