1 IAEAによる保障措置

 現在,IAEAは,各国との間において計画協定又は,二国間協力協定に基づく保障措置移管協定及び英国等の一部核物質への保障措置協定を締結し,保障措置を実施している。
 協定の種類は次のとおりである。(昭和50年6月末現在)
① 計画協定(各国が行う事業に対してIAEAが核燃料等の供給を行う協定)日本(JRR-3),アルゼンチン,チリ,インドネシアスペイン等19ヵ国,25協定(ただしフィンランド,ギリシア,ルーマニア等9ヵ国についてはNPT保障措置協定発効のため計画協定は停止)。
② 保障措置移管協定(二国間原子力協定に基づく保障措置をIAEAに移管するための協定)日米,日英,日加,日仏,日豪,オーストラリア・米国,カナダ・インド,米国・インド間等31協定
③ 単独提供(単独で自国内にある施設に対する保障措置実施の要請をしたもの)英国(一部の核物質),アルゼンチン等7カ国
④ NPTに基づく保障措置協定カナダ,デンマーク等40カ国

(1)我が国における保障措置システム

 我が国は,米国,英国,カナダ,フランス,オーストラリアの5カ国との間に,原子力協力協定を締結している。この協定に基づき,核燃料物質等の移転が行われているほか,我が国は,移転された核燃料物質等及びそれを使用して生産された特殊核分裂性物質の利用は,平和目的に限ること及びその約束の履行を確認するための保障措置を受け入れること,これをIAEAに移管することを約束している。
 このため,我が国は協力協定当事国とIAEAとの間に,三者間の保障措置移管協定を締結し,IAEAの保障措置を受けている。また,JRR-3については我が国とIAEAとの間の計画協定に基づき,保障措置が実施されている。
 IAEAの保障措置の対象は,移転された設備,施設,核物質及びこれらの使用により生産された特殊核分裂性物質等であり,その主な内容は,
① 原子炉,加工施設等の設計資料の提出
② 核物質の計量管理と施設の運転に関する記録の保持及び報告書の提出
③ 査察の受入れ
 である。

(2)我が国の対象施設数と査察実績

 我が国の昭和49年12月31日現在の保障措置対象施設数と査察実績は次表に示すとおりである。

 我が国の原子力開発利用の急速な進展に伴い,保障措置の対象となる核物質及び原子力施設は著しく増加している。
 昭和48年11月5日から5日間,東京において,「核物質の計量・管理制度に関するパネル」が開催され,主に国の核物質計量・管理制度とIAEAの制度との間の調整について議論が行われた。


目次へ          第10章 第2節へ