第14章 原子力知識の普及活動およびその他
1. 原子力知識の普及活動

 わが国の原子力開発利用は,原子力発電をはじめとして広い分野にわたり,著しい進展を見せている。これに伴い原子力の安全・環境問題に関する国民の関心がとみに高まっている。原子力開発利用を円滑に推進するためには,一般国民に対して,原子力に関する知識を普及し,原子力開発利用に対する理解の向上に努めることにより,その協力を得ることが必要となっている。
 科学技術庁においては,昭和48年度から普及啓発活動を強化するとともに,原子力を含めて普及啓発業務の一元的な実施を図るため,5月1日から振興局に普及啓発課を発足させた。
 昭和47年度における原子力知識の普及活動は,主として科学技術週間および「原子力の日」の行事を中心に行なわれた。
 第13回科学技術週間は昭和47年4月17日(日)から23日(日)までとされ,この期間中に日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,放射線医学総合研究所等の諸施設が一般に公開され,また,各地で講演会,音楽会,映画会等が催された。
 昭和47年10月26日の第9回「原子力の日」を中心として全国各地で多彩な記念行事が行なわれた。東京においては,原子力広報連絡協議会を構成する科学技術庁,通商産業省,運輸省,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,日本原子力船開発事業団,日本原子力産業会議および日本原子力文化振興財団の8機関の主催により「原子力写真展」が開催された。このほか,放射線医学総合研究所は創立15周年を記念して講演会を開催するなど全国各地において映画会,講演会,原子力発電所見学会等が行なわれた。
 また,上記8機関は,「原子力の日」記念行事の一環として文部省の後援を得て,全国の高校生を対象として「原子力の日記念高校生作文」を募集した。
 この結果,各地の高校生から116編の応募があり,13点が入選し,うち3点は最優秀作品として,科学技術庁長官賞が授与された。
 科学技術庁は,関係機関の協力を得て,次代を担う若い世代に原子力に関する正しい知識を普及させるため,高等学校および中学校の教職員を対象として「原子力セミナー」を年2回行なっている。また,高等学校の理科担当教員を対象として放射線に関する講義と実験を内容とした「原子力実験セミナー」を年1回行なっているとともに,地方自治体の原子力関係職員に必要な知識を普及させ原子力関係行政事務の円滑な推進を図るため,「原子力行政セミナー」を年1回行なっている。47年度には,「原子力セミナー」は8月初旬〜中旬にかけて,札幌市(第23回)および高松市(第24回)において実施した。受構者は両回合計311名であった。第5回「原子力実験セミナー」は昭和48年3月,化学,生物系を中心とするAコースを放医研で,物理,化学系を中心とするBコースを原研で実施し,受講者は合計53名であった。
 また,科学技術庁原子力局および日本原子力研究所は従来から原子力平和利用に関する映画を製作してきたが,47年度には発電用軽水炉のしくみを,事故防止対策,放射能漏洩防止対策等を中心として解説した「原子炉のしくみ」を作成した。47年度までに作成されたわが国の主な原子力関係の映画は付録V-9に示すとおりである。
 原子力開発を円滑に進めるためには,地方公共団体との連絡を密にし,適切な情報を提供することが必要であり,このため原子力局の監修で「原子力特報」が日本原子力文化振興財団から発行されている。


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