3. 二国間協力

 わが国は,米国,英国,カナダ,フランスおよびオーストラリアのそれぞれとの間に,原子力協定を締結し,核燃料,原子力技術等の入手をはかるとともに,情報の交換,専門家の交流,共同研究等を進め,わが国の原子力平和利用の推進に役立ててきた。
 今日,濃縮ウランの確保,新型炉の開発,原子炉安全性の研究,環境問題の解決等が,各国共通の課題となってきており,二国間協力を進めていくことが一層重要となってきている。

(1)米国

 米国との間には,原子力の平和利用について広範な協力をするため,昭和43年に原子力協力協定を締結したが,原子力の実用化が進展したのに伴い,濃縮ウランなどの核燃料物質の供給に関して協力関係を発展させる必要が生じてきた。このため,本協定を改正する議定書の締結について昭和47年8月以来米国と交渉を行なってきた結果,昭和48年3月28日ワシントンで,牛場駐米大使と,グリーン国務次官補およびレイ原子力委員会委員長とによりこの議定書の署名が行なわれた。
 本議定書による主な改正点は,次のとおりである。
① わが国は,協定に基づき,昭和48年末までに着工される発電用原子炉(総設備容量約2,000万KW)に必要な濃縮ウランを米国から入手することができることになっていたが,わが国の原子力発電計画の進展によりこれを拡大する必要が生じたため,昭和49年以降に着工が予想される発電用原子炉(設備容量約4,000万KW)に必要な濃縮ウランをも入手できるように改める。
② 米国からわが国に移転される濃縮ウランに関し,供給保証する,原子炉を特定する,供給形式を売却でなく役務提供に限定する,料金を米国内のものと同一とすることなどの規定があったが,これらの供給条件については協定中とくに規定することなく当事者間の契約に委ねることに改める。
③ 保障措置については,米国による保障措置の実施権を第1義務的なものとしていたのを,現実の保障措置の実施状態にあわせてIAEAの保障措置の適用を原則とすることに改める。
④ 有効期間をさらに5年間延長する。
 さらに,昭和48年2月米国議会上下両院合同原子力委員会のプライス委員長,ボスマー議員およびハンセン議員が来日し,濃縮ウランの供給に関する米国の基本的な方針,安全,環境問題への対処方針等日米両国の原子力政策に関する意見交換が行なわれた。
 また,翌3月には,東京において日本側は,前田原子力委員会委員長が代表となり,米国側は,ダブ原子力委員が代表となって第4回日米原子力会議が開催された。
 会議においては,米国の新しい濃縮ウラン供給政策,新型炉の開発計画,原子力施設の立地対策,放射性廃棄物の処理,処分の方針,低レベル放射線の人体に及ぼす影響に関する研究等について意見交換が行なわれ,今後とも両国間の協力を一層緊密化する必要性がある点で意見の一致をみた。
 さらに昭和47年12月に日米原子炉安全審査専門家会議が,昭和48年2月には,日米保障措置専門家会議がともに東京で開催され,有益な意見交換が行なわれた。

(2)英国

 昭和48年3月,東京においてわが国からは,前田原子力委員会委員長が代表となり,英国側は,英国原子力公社総裁ジョン・ヒル卿が代表となって第3回日英原子力会議が開催された。
 会議においては,両国における原子力発電の進展に伴い緊要な課題となってきたウラン濃縮および再処理を含む核燃料の問題,新型炉の開発を含めた長期的なエネルギー政策,環境,安全問題等について意見交換が行なわれ,原子力平和利用のすべての分野において両国間の協力関係を一層強化するように努力することが合意された。
 また,原研および動燃事業団と英国原子力公社との間で液体金属冷却高速炉に関する情報交換がひきつづき行なわれた。

(3)スエーデン

 スエーデンとの間には,従来から原子力の平和利用についての協力が,人的交流および情報交換の形で行なわれてきたが,この協力関係をさらに発展させるため,両国政府間の取りきめを締結したいとの要望がスエーデン側から出され,このための交渉を行なってきた。この結果,昭和48年3月27日東京において,大平外務大臣とグンナル・ヘックシャー駐日スエーデン大使との間で原子力の平和的利用についての協力のための書簡を交換した。この書簡交換は,両国政府が科学的および技術的情報の交換,専門家の交流,研究者および技術者の相互訓練等の方法により原子力の平和利用についての協力を発展させ,容易にするよう努力することなどを規定しており,今後の協力促進のための基本的な枠組としての性質を有するものである。

(4)その他

 フランスとの間では,昭和47年9月日仏原子力協力協定が発効し,わが国の電気事業者と相手国業者との間で天然ウランの供給契約の締結が進展している。また,動燃事業団と仏原子力庁との間においては,液体金属冷却高速炉,原研と仏原子力庁との間においては,放射線化学および材料試験炉に関する情報交換を引き続き行なった。
 オーストラリアとの間では,昭和47年7月日豪原子力協力協定が発効しわが国の電気事業者と相手国業者との間で天然ウランの供給契約の締結が進展している。
 西独からは,両国間の協力をすすめる一環として原子炉安全問題に関する調査団が,昭和47年11月に来日した。


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