2. 国際機関との協力

(1)国際原子力機関(IAEA)

 昭和47年度のIAEAの主な活動は,原子力の環境に対する影響の検討,原子力に関する開発途上国援助の実施および核兵器不拡散条約に関する保障措置協定の交渉であったが,わが国は,理事国としてこれらの諸課題について,総会および理事会において,積極的な活動を行なった。また,その他の活動についてもIAEAが主催するパネル,シンポジウム等に多数の専門家が参加した。
 原子力の環境に対する影響の検討に関しては,昭和47年3月に開催された理事会において,IAEAの活動分野として,環境の保護,とくに,原子力施設からの廃棄物の安全な管理に重点を置くことが決定され,さらに同年9月,メキシコにおいて開催された第16回総会においても,このような活動方針が強調された。これは,同年6月,ストックホルムで開催された国連人間環境会議での討議および,同年11月,ロンドンにおいて採択された廃棄物及びその他の物質の投棄による海洋汚染の防止に関する条約等にみられる世界的な環境保護に対する関心の高まりを反映したものであり,またとくに,上記条約において,同条約が海洋投棄に不適当な高レベルの放射性廃棄物および放射性物質の定義づけを行なうことならびにこれ以外の放射性物質の投棄に対する許可の基準手続きなどに関する勧告を行なうことをIAEAに要請しているのに応じたものである。
 IAEAは,この問題の検討のための専門家会議を開催するとともに,環境保護に関する活動を強化するため,1973年度において,当初予定ざれた計画及び予算に加え,新たに約10万ドルの特別基金を設けることとし,日本から7941ドルの寄与を行なうこととなった。
 原子力に関する開発途上国援助については,1972年度において,各国からの任意拠出金,国連開発計画(UNDP)からの資金等を含め,総額約620万ドルが当てられ,技術援助および技術者の訓練が実施された。
 そのほか,IAEAは,原子力平和利用活動の一環として毎年多くの専門家パネル,シンポジウム等の各種会議を開催しており,わが国からも積極的に参加している。昭和47年度には,わが国から専門家パネル,シンポジウムなどの会議に延べ96名が参加した。また,昭和47年度においてはIAEAが行なった開発途上国における原子力発電市場調査に対して,海外援助協力事業団等の援助により,わが国からも3名の専門家を派遣した。
 なお,IAEAの加盟国は,第16回総会において,バングラデシュの加盟が承認され,現在103ヶ国である。

(2)OECD原子力機関(NEA)

 OECD原子力機関の前身である欧州原子力機関(ENEA)は,1957年に設立されたが,わが国は1965年から準加盟国として,その各種事業に参加してきた。その後ENEAは,加盟国の範囲をOECDなみに拡大するとともに研究開発に関する協力を中心としていた活動分野を核燃料,環境安全問題等の政策面にも拡充する方針を打出した。わが国としても,実用段階に入ったわが国の原子力平和利用推進の上でENEAに正式に加盟することがきわめて有意義であると考えられたので,1972年4月,正式加盟国となった。ENEAは,わが国の正式加盟に伴ない同年5月OECD-原子力機関(NEA)と改称された。
 すでに触れたごとくOECD-NEAは,従来,研究開発に関する協力を中心として活動してきたが,近年における原子力の実用化,商業化のいちじるしい進展に応じて,それに付随する種々の問題について,各国の原子力開発利用に,おける政策立案に国際機関として,寄与し得るよう,その果すべき役割を変更する必要性のあることを認識し,わが国の正式加盟および1973年における欧州共同体の拡大を機に,将来の計画について検討をすすめてきた。
 新計画は1973年2月,NEAの運営委員会で決定され同年4月,OECD理事会において承認された。本計画によるとNEAの将来の活動は,①原子力の安全および規制に関する問題の検討,②原子力開発に関する経済的,技術的問題の研究,③技術協力および情報交流の推進を行なうこととし,この方針の下に,NEAに設置されている各種委員会の整備等が進められることになった。
 わが国は上記将来計画の策定に参画した。また,従来から進められている沸騰重水炉計画(ハルデン計画),新国際食品照射計画,中性子データ編集センタ-および計算機プラグロムライブラリーの共同事業に参加しているほか,NEAに設けられている各種委員会,スタディグループ等において積極的な活動を行なった。


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