第6章 環境保全
§2 放射性廃棄物の処理処分

1 放射性廃棄物処理処分の概要と現状

 わが国では,「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」によって放射性同位元素等使用事業所(RI使用事業所)を,「核原料物質,核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」によって,核燃料の加工,再処理等の事業所および原子力発電所をそれぞれ対象として,それら施設で発生する放射性廃棄物に対する規制を実施している。
 RI等使用事業所で発生する液体状および固体状の放射性廃棄物のうち,各事業所で処理処分することが困難なものについては,一時,各事業所の保管廃棄設備に保管した後日本アイソトープ協会に引渡される。日本アイソトープ協会は,容器に封入されたこれら廃棄物を専用のトラックで全国4カ所(関東,関西,九州,東北)の貯蔵所に種類別に分類保管したうえ,最終的に日本原子力研究所東海研究所に集荷している。ここでは,これらの廃棄物について処理を施し,半地下構造式のコンクリートピットに保管廃棄している。
 原子力発電所等の原子力施設で発生する放射性廃棄物は,その種類と発生量ならびにその管理方法が炉型によってそれぞれ異なるが,BWRでは原子炉冷却水中に混入した放射性物質を除去するため運転中は常時その一部をバイパス浄化系へ抽出し,フィルタおよび脱塩装置によって浄化し,またタービン駆動後の復水も復水系脱塩装置によって浄化したのち,再び炉心部へ送られるようになっている。放射性物質を吸着したフィルタおよび浄化系脱塩装置からの使用済樹脂は脱水後,貯蔵タンクに貯留される。一方,復水系脱塩装置のイオン交換樹脂は,再生使用されるので,再生の際に発生した廃液は蒸発濃縮される。濃縮廃液,フィルタ・スラッジおよび雑固体はドラム缶にコンクリート固化される。他方,PWRでは,BWRと同様に運転中に常時,原子炉一次冷却水の一部をバイパス浄化系へ抽出浄化しているほか,原子炉の反応調整のため,間けつ的に一部を抽出浄化する処理系統がある。これらの処理系統からの使用済樹脂は,貯蔵タンクに貯留される。また,一部イオン交換樹脂の再生廃液の濃縮廃液,フィルタ・スラッジ,雑固体はドラム缶にコンクリート固化される。現在運転中の原子力発電所における放射性固体廃棄物の処理の一例を図示すると,(第6-1図)のようになる。


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