第5章 安全性の確保
§2 原子力施設の安全対策

3 放射性同位元素の使用等にともなう安全対策

(1) 放射性同位元素の使用等の許可および届出
 放射性同位元素の使用等にともなう安全性の確保については,「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(放射線障害防止法)にもとづき,規制が行なわれている。すなわち同法は,放射性同位元素,放射線発生装置を使用しようとする者,また,放射性同位元素の販売ならびに放射性同位元素によって汚染された物の廃棄の業を行なおうとするものに対し,許可または届出(密封された放射性同位元素の1工場または1事業所あたりの使用総量が100ミリキュリー以下の場合には届出)を義務づけている。
 これら使用,販売,廃棄の事業の許可にあたっては,事業所等からの申請内容を検討し,使用,詰替,貯蔵,廃棄等の施設,その他について,同法に規定する許可基準に適合しているか否かを審査したのち,許可(届出の受理)することとしている。
 また放射性同位元素等の取扱いにあたっては,放射線障害予防規定の作成,放射線取扱主任者の選任を義務づけ管理上の安全を期し,さらに使用等にあたっては,作業従事者の被ばく線量の測定,健康診断等放射線障害防止上の基準を設けて放射線作業従事者の安全をはかるばかりでなく,線量率の測定,排気,排水中の放射性物質の濃度を規制することにより事業所外の一般公衆の安全を確保している。
 これら事業所は,教育機関をはじめ研究機関,医療機関,民間企業等多岐にわたり,その数も(第5-1図)に示すとおり,年々増加しており,昭和46年度には,321事業所が新たに許可され,286事業所から届出があった。この結果昭和46年度末現在許可事業所1,840,届出事業所716,合計2,556事業所となった。販売の業については昭和46年度14事業所が許可され,合計90事業所となり,廃棄の業は前年度と変りなく6事業所である。

(2) 放射性同位元素使用事業所等に対する立入検査
 放射線障害防止法では,同法または同法にもとづく命令の実施のため,科学技術庁長官は,必要ある場合には,使用事業所等の放射線取扱施設に放射線検査官を立入らせ,必要物件の検査を行ないうることになっている。
 この規定にもとづぎ,使用事業所等への検査が毎年行なわれているが,昭和46年度は,448事業所について検査が行なわれた。

(3) 放射線被ばく事故
 昭和46年9月20事,三井造船(株)千葉造船所構内において非破壊検査を実施した中国X線(株)職員が192Ir線源を紛失,この線源により数名の被ばく者を出す事故が発生した。
 科学技術庁は,中国X線(株)に対し同年11月聴聞会を開き,12月17日より15日間の放射性同位元素の使用を停止,および放射線取扱主任者の解任を命じた。さらに非破壊検査業界に対しかかる事故を未然に防ぐための万全の対策を講ずるよう厳重な指導を行なった。


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