第2章 原子力発電

§4 世界の原子力発電

 1971年(昭和46年)末現在,世界中では(第2-4表)に示す通り108基,総電気出力26,490千kwもの原子力発電所が稼動中である。その発電設備容量の国別内訳は,米国37.1%,英国18.2%,ソ連8.8%,フランス8.2%でこの4ヶ国で世界の大半(72.3%)を占めており,西独,カナダがこれらに続いている。建設中および計画中の発電炉を加えると,1971年(昭和46年)末現在の原子力発電設備は,330基で195,954千kwにも達し,前年度に対し稼動中のもので31%,建設・計画中のものまで含めると35%増加している。建設・計画中のものを含めても全発電設備で18%の増加に過ぎなかった1970年(昭和45年)と比較するとECCS,環境保全等種々な問題が原子力発電に投ぜられたにもかかわらず,1971年(昭和46年)において大幅な受注増加を示し1972年(昭和47年)にも同様の傾向が見られていることは,世界的に,原子力発電の本格的な実用化の段階を迎えていることを意味しているものといえよう。((第2-1図))
 これは,火力発電が原油価格上昇,環境汚染等の問題をかかえているのに対して原子力発電はスケールメリットを含めた技術的進歩等により,軽水炉を中心として原子力発電の有利性が世界的に広く認められてきたためと考えられる。
 昨年メキシコが最初の本格的な原子力発電設備を発注したが,このほか南アフリカ共和国,チリ等でも原子力発電所の建設が計画されており,このような原子力発電に対する世界的な関心の高まりによって,1980年には原子力発電設備を有する国は30カ国を越えるものと予想されている。
 発電設備を炉型別((第2-5表))についてみると,軽水炉が運転中のものについては,15,557千kw(59%)と全発電設備の半分以上を古め,建設・計画中のものについては138,415千kw(85%)とその大半を占めている。一方,ガス冷却炉については,運転中が6956千kw(26%)建設・計画中が14,773千kw(9%)となっている。このように,世界の原子力発電は軽水炉を中心に急速に進展しているが,前年との大きな違いは軽水炉市場におけるPWRの受注量の大幅な伸びと,新たなシェアを獲得した高温ガス炉の拾頭である。

 米国では,1970年(昭和45年)には約13,000千kw,1971年(昭和46年)には約20,000千kwと増大傾向を示している。
 しかし,昨年のカルバートクリフス判決に端を発した環境保護問題等により,安全審査の期間が伸びることも考えられ,原子力発電の将来に大きな影響をもたらしそうである。
 英国は,現在,ガス冷却型炉を推進しているが,将来の炉型選択については目下検討中であり,今後軽水炉を採用する可能性もある。

 フランスでは,当初天然ウラン黒鉛減速炭酸ガス冷却型炉を開発してきたが,経済性の欠如により,1969年ガス冷却炉を断念し,軽水炉の導入を決定した。昨年は,2,220千kwの軽水炉の建設に着手している。
 ソ連では,独自の黒鉛減速型炉と軽水炉による原子力発電所の運転や建設を進める一方,世界に先がけて,1972年1月,電気出力350千kwの高速増殖炉BN-350を完成した。
 世界の原子力発電は,以上の如く,軽水炉を中心として急速に進展しつつあり,これに加えて,1地点に発電炉が集中化する傾向がみられる。


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