第14章 原子力関係科学技術者の養成およびその他の活動

§4 原子力損害の賠償

 わが国の原子力損害賠償制度は,「原子力損害の賠償に関する法律」と「原子力損害賠償補償契約に関する法律」の2つの法律から成り立っているが,両方とも昭和36年に制定されていらい10年近く経過しており,この間における内外の事情の変化に対処するために政府は原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償契約に関する法律の一部を改正する法律案を第65回国会に提出し,同法案は,昭和46年3月19日衆議院本会議で,同年4月23日参議院でそれぞれ採決され,同年5月1日公布された。
 これにともない,同年9月30日関係政令等の一部改正を公布し,同年10月1日から改正法が施行された。
 主要な改正点は次のとおりである。
① 国との補償契約制度と国の援助の規定の適用をさらに10年延長し,昭和56年12月末までに運転を開始する原子炉等に適用することとした。
② 原子力船に係る制度を整備し,国際寄港の場合には,事業者の責任限度額を360億円を下らない額で政府が当該外国政府と合意した額までとしその額までの損害賠償措置を講じさせることとした。
③ 賠償措置額50億円を60億円に引上げた。
④ 求償権の行使については,特約がある場合を除き第三者に故意がある場合に限ることとする等関連規定を整備した。
 また,本改正法案の国会における採決の際の付帯決議等もあり,原子力委員会は昭和46年11月11日,原子力事業の従業員が被った原子力損害の賠償問題を検討するため原子力事業従業員災害補償専門部会を設置し,検討を開始した。
 なお,賠償法では,原子炉の運転等を行なう場合原子力事業者は,原子力損害を賠償するための措置(政府との原子力損害賠償補償契約および保険会社との原子力損害賠償責任保険契約の締結,または供託)を講じ,科学技術庁長官の承認を受けなければならないことになっているが,その年度別承認件数は(第14-3表)のとおりである。


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