第13章 保障措置

§2 保障措置に関する国際環境

1 現行のIAEA保障措置
 現在,IAEAは,各国との間において計画協定または二国間協力協定に基づく保障措置移管協定および英国等の一部原子力施設への保障措置適用の協定を締結し,保障措置を実施している。
 各協定の種類および保障措置対象施設数は次のとおりである。(昭和46年6月末現在)
① 計画協定(各国が行なう事業に対してIAEAが核燃料等の供給を行なう協定)日本(JRR-3),アルゼンチン,チリー,インドネシア,パキスタン,スペイン等13か国と締結
② 保障措置移管協定(二国間協力協定に基づく保障措置をIAEAに移管するための協定)日米,日英,日加,オーストラリア・米国,インド・米国,パキスタン・カナダ間等27協定を締結
③ 単独提供(単独で自国内のある施設につき保障措置の適用を要請したもの)英国,メキシコ(全原子力活動),中華民国
④ 保障措置対象施設数

2 NPT下の保障措置
 NPTに基づく保障措置については,IAEA保障措置委員会で審議され,同委員会は,NPT締結国である非核兵器国がIAEAとの間に締結する保障措置協定に盛り込むべき事項について,IAEA理事会に報告した。
 昭和46年4月,理事会は,保障措置委員会の報告を承認し,IAEA事務局長に対して委員会報告をNPT締結国である非核兵器国との保障措置協定交渉を行なう際の基礎として使用するよう要請する決議をした。
 IAEAは,この理事会決定に基づき,NPT締結国との同で保障措置協定の交渉を行なっており,昭和47年3月末現在19カ国との交渉を終了している。
 この報告においては,保障措置の実施にあたり,① 保障措置の分野における技術的発展を十分考慮すること。② 最適の費用対効果を確保すること。③ 核物質の流れの重要な点に機器等を使用して,効果的に実施すること。④ 産業秘密を保護するためあらゆる予防措置をとること等の原則が明確認された。
 この報告に盛り込まれた内容を従来の制度と比較してみると
① 締約国が核物質計量,管理制度を設定し,核物質の管理を行ない,IAEAはその結果を検証する形で保障措置を適用すること。
② IAEAの検証のための立入は,従来は原則としてどこでも立入が認められていたのに対し,NPTの保障措置では,締約国との間であらかじめ合意されている場所にのみ限られること。
③ 査察については,従来は一定量以上の核物質を使用する施設に対して常時立入る権利が認められていたが,NPTの保障措置では,常時立入る権利がなくなり,査察の期間,回数および人数を考慮した最大査察業務量がきめられたことなどに特色がある。

3 各国の動き
 昭和47年3月末現在でNPT署名国は98カ国,NPT批准国または加盟国は68カ国となっている。署名を行なっているが,まだ批准していない国は,ユーラトム諸国(ベルギー,ドイツ,イタリア,オランダ,ルクセンブルグ),オーストラリア,エジプト,アラブ共和国,日本など,また,主な未署名国は,フランス,中国,インド,イスラエル,パキスタン,ブラジル,南アフリカなどである。
 一方,NPT下の保障措置協定については,昭和46年4月のIAEA理事会決定に基づき,IAEA事務局と関係各国との間の本格的な交渉の段階に入っており,オーストラリア,カナダ,ポーランド,チェコスロバキア,東ドイツ等19カ国が既にIAEAとの交渉を終了した。
 ユーラトム諸国は,NPTをまだ批准していないが,NPT保障措置協定交渉が終了した段階でNPTを批准することとして昭和46年末よりNPT保障措置協定締結のための予備交渉をIAEAとの間に行なっている。
 わが国としても,保障措置協定の実際の運用面における平等性の確保を図るため,NPT保障措置の具体的な適用方法についてみきわめるとの観点から予備交渉を開始することが必要である。


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