§3 海外の原子力発電

 世界の原子力発電の現状は,(第3-2表)に示したとおり,運転中の総電気出力は1,461万キロワットであり,そのうち,米国436万キロワット(29%),英国,416万キロワット(28%),フランス,162万キロワット(11%),ソ連,114万キロワット(8%)となり,四大国で,総発電容量の76%を占めている。これに続いてイタリア,西ドイツ,カナダ,日本が主要な原子力発電国になっている。また,昨年度中新らたに原子力発電所を設置した国としては,インド,スイス,パキスタンの三国が掲げられる。このうち,インドに建設された沸騰水型炉発電所は,開発途上国最初の本格的商業炉である。
 建設中および計画中の原子炉の総電気出力は,1億858万キロワットに達し,前年度より1,749万キロワット(19%)増加している。昨年1年間で最初の本格的な原子力発電施設を発注した国々には,オランダやフィンランドのほか,韓国や台湾も含まれている。
 このほか,メキシコ,オーストリア,オーストラリア,南アフリカ等の国々でも原子力発電所の建設が計画されており,このような原子力発電に対する世界的な関心の高まりにより,1980年には,原子力発電設備を有する国は,30ケ国を越えるものと予想される。
 次に,原子力先進諸国についてみると,米国は,1966年以来,原子炉の発注が急増したが,1968,69年の両年は,その発注量が減少している。

 これは,主としてメーカーの原子力発電設備の受注過剰に起因するものとみられているが,この傾向が1時的なものかどうか今後の動向が注目されている。
 イギリスは,現在27の原子力発電設備を設置しており,さらに総出力639万キロワット余の11の設備を建設中である。これらはすべて,ガス冷却炉であり,英国初の本格的な改良型ガス炉(AGR)は1971年ないし,72年に運転の運びとなる見込である。
 天然ウラン黒鉛減速炭酸ガス冷却炉のみを独自に開発してきたフランスは,経済性の欠陥により,新たに軽水炉システムの方向に転換するという重大な決定を下した。これによると,従来のガス冷却型と,軽水型を併行して開発することになっているが,実際問題としては,70年以降は,ガス冷却炉の建設は行なわず,軽水炉を導入する可能性が強いと見られている。
 西ドイツは,今日総出力87万キロワットの原子力発電設備を持ち,1980年までに総出力2,500万キロワットの設備能力を備える事としており,これは同年のドイツの総発電容量の25%に当ると予想されている。
 その他,カナダでは天然ウラン重水減速軽水冷却型炉(CANDU)の開発がすすめられているし,ソ連でも,軽水炉による発電所の建設が進められている。炉型別の原子力発電設備については(第3-3表)に示す。


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