§2 国際機関との協力

 1国際原子力機関(IAEA)

 44年度は核兵器不拡散条約(NPT)の発効の見通しが高まってきたことにともなって,国際原子力機関(IAEA)の活動に占めるNPTにもとづく保障措置問題の比重はきわめて高まった。
 IAEAの総会,理事会等の概況およびその場におけるわが国の活動状況は次のとおりである。

  (1)総会

 IAEA第13回総会は,44年9月加盟国73か国および国際機関等21の参加のもとにウィーンにおいて開催され,わが国からは,平泉科学技術政務次官が代表演説を行なった。
 なお,今回の総会で承認されたIAEAの1970年度経常予算は1225万ドル,運営予算は258万ドルであり,わが国の分担率は3.43%である。
 今回の総会の特色としては,①NPT下のIAEAの役割が従来より明らかな姿で画き上げられてきたこと,②原子力発電の産業化への期待が高まったこと,③NPTの下でのIAEAの役割の増加が予想されてきたことにも開連して理事会の構成問題が昨年の総会以来とりあげられてきたこと等があげられる。上記①に関しては,NPT3条にもとづく保障措置について(イ)保障措置委員会の設置,(ロ)査察員の増員,(ハ)費用の負担,(ニ)保障措置技術の研究開発の諸問題の3点がとりあげられた。また,NPT5条にもとづく核爆発平和利用の監視役としての国際機関をIAEAと別の組織とするかどうかについても議論がなされたが,結局IAEAの枠内でサービスを行なうこととなった。
 なお,本総会において,わが国代表が行なった演説要旨は次のとおりである。
(イ) 現在IAEAの保障措置の適用を受けている世界中の全原子炉のうち約30%が日本にある。IAEAの保障措置を受け入れていない他の諸国(核兵器国も含めて)がこれを受け入れることを期待する。
 IAEAの保障措置は合理的かつ能率的なものとしなければならない。
 最少の費用で最大の効果をあげるには国または多数国間の行なう保障措置をIAEAが検証するという考え方が必要である。また保障措置の内容は平等なものでなければならないということも重要な要件である。
(ロ) 科学技術情報の国際交流を促進する必要がある。また,核爆発平和利用に関する情報の交流をはかることも必要である。
(ハ) 理事会の拡大は,その能率を損なわないようできるだけ控え目にとどめるべきである。
  (2)理事会

 理事会は毎年2月,6月および9月の3回開催されているが,本年度はNPT発効とも関連して45年4月に特別理事会が開かれた。わが国は,IAEA創設以来理事国としての地位にあり,理事会の場においても積極的に活動している。
 理事会においても,NPTの下における保障措置,核爆発平和利用,理事会構成(憲章6条改正)等の問題を中心に議論がなされた。特に保障措置については,45年の2月理事会において,NPT発効が間近かに予想される情勢を背景にNPTにもとづくIAEAの保障措置を検討するための保障措置委員会の設置について議論が行なわれたが,結論は出なかった。そこで,保障措置問題検討のため45年4月に特別理事会が開催され,同理事会において保障措置委員会設置決議案が採択され,同委員会の45年6月設置等が決まった。
  (3)パネル,シンポジューム等<

 IAEAは原子力平和利用活動の一環として毎年数多くのパネル,シンポジューム等を開催しており,わが国からも各界から積極的に参加している。とくに44年度においては「圧力容器耐震設計パネル」および「保障措置技術パネル」が東京において開催され,技術面の検討において有意義な成果を収めるとともに,わが国と諸外国との間の協調関係を強めるうえにおいて意義ある成果を収めた。
 なお,上記2つのパネルのほか,44年度にはわが国からは計42のパネル,シンポジューム等の会議に延べ82名が正式メンバーまたはオブザーバーとして参加した。
 以上のほか,IAEAが行なう技術援助の一環として,わが国から開発途上国に技術的専門家を派遣するとともに,IAEAフエローシップにより開発途上国から留学生を受け入れている。
 また,原子力委員会は,44年度海外原子力関係招へい者としてIAEA法律部長W。ブーランジェ博士を招へいした。
  2欧州原子力機関(ENEA)

わが国は,40年2月,ENEAに準加盟し,41年からその諸活動に参加している。
44年度の参加状況は,ENEAの3共同事業の一つであるハルデン計画に原研が参加しているほか,サクレーにある中性子データ編集センターおよびイスプラの計算機プログラムライブラリーに日本政府が参加している。
 このほか,わが国はENEAが主催する各種の研究委員会,スタディグループに参加しているほか,運営委員会にはオブザーバーとして出席している。
 なお,昭和44年3月にはENEA事務局次長ウィリアムズ氏およびENEA技術課長ボクサー氏の両名が来日し,わが国とENEAとの協力関係について懇談した。


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