§8 安全性の確保と関連施策

 昭和45年3月末現在,わが国における運転中の原子炉は,臨界実験装置を含めて,22基に達しており,更に10基の原子炉が建設中である。一方,放射性同位元素を使用する事業所数は1,800をこえ,またおよそ100の事業所において核燃料物質を取り扱っている。これ等の施設において,安全性の確保をはかることは極めて重要である。このため政府は,「核原料物資,核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)および「放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律」(放射線障害防止法)にもとづき,必要な措置を講じ安全性の確保をはかってきた。特に最近軽水炉による原子力発電所の設置が相次ぎ,将来さらに多くの発電所の建設が予想されること,および新型動力炉の開発が本格化し,新型動力炉の安全審査指針を確立する必要があることなどから,原子力委員会は43年10月,動力炉安全基準専門部会を設置し,現行の審査指針の検討,整備を進めてきた。このうち軽水炉の安全設計に関する審査指針の策定については,45年4月に結論を得たほか,現行の原子炉立地審査指針の具体的な適用に必要な事項についての検討,整備がすすめられている。また新型動力炉に関しては,その安全審査のすすめ方,および原子炉の立地審査上必要なプルトニウムに関する目安線量の策定等について結論を得た。
 一方,原子力発電所の運転に関し,発電所周辺における放射能の評価,検討を行ない,その結果を地元住民に周知させるための体制が福井県,福島県と電気事業者との間で確立され,地域住民の不安感の解消に寄与している。
 また,原子力の開発,利用の進展に伴い急激に増加しつつある放射性廃棄物の処理処分技術の研究開発が前年度にひきつづき,原研,動燃事業団,放医研などにおいてすすめられ,特に44年度には,放射性固体廃棄物処理処分検討会が科学技術庁原子力局に設置され,この分野での研究開発の具体的な進め方について審議を重ねている。
 このほか,原子力発電所のあいつぐ建設,原子力船の進水等,最近の目ざましい原子力開発利用に対処して,原子力委員会は,44年10月,原子力損害賠償制度検討専門部会を設置し,36年に制定された現行の原子力損害賠償制度の改善について,その検討を行なっている。


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