§9 国際協力の進展

 原子力開発利用の著しい進展に伴なって,原子力分野における国際協力は,国際原子力機関等の国際機関を通じての多国間協力,米国,英国,カナダ,フランス,西ドイツ等の各国との二国間協力を通じて活発に行なわれている。
44年度においては,昨年度から重要課題の一つであった核兵器不拡散条約が,45年3月に発効し,わが国はこれに先立ち同年2月に調印を行なった。同条約の調印に際して,政府は声明を発表し,核兵器の拡散を防止することは,世界平和維持に関する日本政府の政策と一致しており,この条約の精神に賛成してきたが,非核兵器国は,この条約によって原子力平和利用の研究開発,利用およびこのための国際協力をいかなる意味においても妨げられてはならず,わが国が国際原子力機関との間に締結する保障措置協定の内容は,他の締約国が個別または他の国と共同して国際原子力機関との間に締結する保障措置協定の内容に比して,わが国にとり,実質的に不利な取扱いとなることがあってはならず,政府としては,この点を十分考慮した上で条約の批准手続をとる考えであるとこと,また保障措置は核燃料サイクルの枢要な箇所において適用されるとの原則に従い,その手続は,可能な限り各国の管理制度を活用し,できる限り簡素なものでなければならない等の考えを明かにした。また原子力委員会においても,同条約調印について閣議決定が行なわれた際,委員長談話を発表し,特に同条約に係る保障措置の適用については,わが国の原子方産業の活動を阻害しない配慮がなされるべきであるなどの点を強調した。これ等の考えにもとづき,原子力平和利用に関する保障措置問題についての検討が,関係各機関によってすすめられている。
 また,2国間協力については44年6月,東京において第1回日英原子力会議が開催され両国の原子力開発利用の現状と将来,動力炉開発,ウラン濃縮,ブルトニウム問題等多方面にわたって意見の交換が行なわれた。また同じく44年6月,日加原子力会議がオタワにおいて開かれ,動力炉開発,重水の入手問題等を中心に意見の交換が行なわれ,相互の理解が一層深められた。更に45年3月には第2回日米原子力会議が東京で開催され,将来の原子力発電についての意見交換がなされたほか,特に現在のとりきめを上回る将来の濃縮ウランの追加供給については必要な措置を講ずることが合意された。
 このほか,フランスとの園でも,従来から高速増殖炉開発,放射線化学,ウラン資源の供給等の分野で協力が行なわれていたが,今後さらにこれを強化するため,政府間の協力協定を結ぶ方向で検討が進められている。
 これらの政府間の協力とともに,動燃事業団,原研等において,,米国,英国,フランス等の原子力機関との協力協定にもとづき,新型動力炉の開発,放射線化学の研究等について,積極的に国際協力が進められている。


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