§6 放射線利用の進展

 放射線利用については,近年医療,農業,工業等広汎な分野で,日常的に利用されるようになり,放射性同位元素を使用する事業所も逐年増加し,45年3月末現在1835に達しており,このうち民間企業689,医療機関586,研究機関365,教育機関152,その他43となっている。特に民間企業における放射線利用の普及にはいちじるしいものがある。
 一方,放射線利用のための各種照射装置,測定機器の開発,普及も積極的に進められており,特にベータートロン,リニア・アクセラレイター等の高エネルギー照射装置が医療用等の機器として近年大幅に利用されるようになった。
 また,放射線利用に関する研究開発についても,原研高崎研究所,放射線医学総合研究所(放医研),他の国立試験研究機関および大学や主要な病院等で行なわれているが,特に42年度に,原子力委員会が原子力総合研究に指定して推進している食品照射については,従来の馬鈴薯,玉ねぎ,米,ウイナソーセージ等についての照射試験に引き続き,44年度においては,小麦,水産ねり製品について,その保存性向上のための照射試験が行われ,それぞれ良好な成績を収めている。このうち馬鈴薯の発芽防止については近くその実用化が計画されている。このように食品照射についての研究の進展により,今後食品流通の合理化への寄与が期待される。
 また,放射線化学の分野では,原研高崎研究所および,同大阪研究所等で,安定化ポリマーを得るためのトリオキサンの放射線固相重合,エチレンの放射線気相重合,および最近特に関心をよんでいるプラスチックの放射線改質等の面において一部工業化への見通しを得るなど順調な進展をみている。


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