§2 躍進する原子力発電所の建設

 昭和44年末の世界における運転中の原子力発電容量は約1,460万キロワットに達し,更に建設・計画中のものを含めると約1億2,300万キロワットにのぼっている。
 このような情況の中でわが国の原子力発電の開発も,昭和42年4月の「原子力開発利用長期計画」(長期計画)の改訂における見通しを上回るペースで順調に進められており,44年10月には,わが国初の軽水炉による敦賀発電所(日本原子力発電(株))が臨界に達し,45年3月から営業運転を開始した。これにより,わが国で運転中の商業用発電炉は同社の東海発電所と合わせ2基となり,電気出力は合計49万7,000キロワットになった。
 更に前年度から引きつづき建設がすすめられていた4基の発電炉のうち2基(電気出力合計80万キロワット)については,45年2月末現在,共にその工事の90%以上を終え,45年10月に運転開始を予定している。他の2基(電気出力合計128万4,000キロワット)の工事進渉率は2月末現在約40%となっている。
 また,44年度においては,3基の発電炉(電気出力合計207万キロワット)の建設が開始された。
 さらに,各電気事業者によって,発電用原子炉の建設計画が積極的に進められており,45年度においても数基の発電炉の建設が開始されるものとみられている。45年5月に策定された電源開発調整審議会の電源開発長期目標によれば,原子力による発電設備容量は昭和50年度に866万キロワット,55年度に2,702万キロワットとしており,原子力発電の開発規模は,原子力委員会の長期計画の昭和50年度末600万キロワットという見通しを上廻り,さらに同計画の昭和60年度末,3,000ないし4,000万キロワットという見通しをも上廻るものと考えられる。
 このように,原子力は将来のエネルギー供給の有力な担い手として,着実にその地歩をすすめつつあり,これと併行して,原子力発電機器の製造,核燃料加工等の産業化が進みつつある。現在,わが国で建設中の原子力発電所の国産化率は大体50パーセントから90パーセントとなっているが,さらに今後,国際的に競争力を持った原子力産業の発展をはかるため,政府は,在来型炉の国産化の助成,核燃料加工事業の育成,使用済燃料再処理工場の建設の促進に努めている。


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