§2 研究

1JRR-1

 原研のJRR-1は,わが国最初の原子炉であり,32年8月,臨界に達して以来,順調に運転がつづけられてきた。43年度は,9月まで,共同利用,運転訓練,実験等が行なわれたが,以後運転を休止した。43年度の運転時間は304時間,熱出力量は6,084キロワット時であった。

2 JRR-2

 原研のJRR-2は,43年度,共同利用,照射実験およびラジオアイソトープ生産に用いられた。43年7月,制御台焼損事故が発生し,これにともなう制御室の復旧作業と併行して下段プラグ補修工事が行なわれた。43年度の運転時間は1,260時間,熱出力量は1,126万キロワット時であった。

3 JRR-3

 原研のJRR-3は国産1号炉であり,43年度は,共同利用やラジオアイソトープの生産に用いられた。
44年3月には,低温化学照射装置が設置されたほか,脳腫よう治療のための中性子線照射が行なわれた。43年度の運転時開は3,017時間,熱出力量は2,857万キロワット時であった。
 なお,本炉は,43年度において燃料棒7本があいついで破損したため,現在その原因等について調査中である。

4 JRR-4

 原研のJRR-4は,43年度,原研と運輸省船舶技術研究所(船研)の共同研究によるしゃへい実験,訓練運転,ラジオアイソトープ生産および炉特性試験等のための運転が行なわれた。43年度の運転時間は658時間,熱出力量は71.7万キロワット時であった。

5 立教大学炉

 立教大学の原子炉は,研究および教育訓練を目的として設置された。43年度も引きつづき研究利用が行なわれた。

6 武蔵工大炉

 武蔵工業大学の原子炉は,研究および教育訓練を目的として設置された。
43年度も引きつづき研究利用が行なわれた。

7 日立教育訓練用原子炉

 (株)東京原子力産業研究所の原子炉(HTR)は,水型炉の炉工学,放射化分析,照射および教育訓練用として設置された。43年は,これら所期の実験利用が行なわれたほか,とくに43年8月には,わが国初の脳腫よう治療のための中性子線照射に使用された。また,原子炉過出力時の燃料破損基礎特性の究明に関するパルス実験については,投入反応度1.3%△K/Kまでが許可され,実験がすすめられている。

8 東芝炉

 東京芝浦電気(株)の原子炉は,炉工学,炉物理実験,照射利用を目的として設置された。43年度は,有機物と核分裂生成ヨウ素の反応によるヨウ化メチルの生成機構に関する研究,インコアーモニターの開発研究等が行なわれた。

9 近畿大学炉

 近畿大学の原子炉は,研究および教育訓練を目的として設置された。43年度も引きつづき研究利用が行なわれた。

10 京都大学炉

 京都大学の原子炉は,研究および教育訓練を目的として設置された。42年度に1MWから5MWへの出力増加が許可され,改造工事にとりかかった。
43年度も工事を継続し,43年4月,臨界に達した。
 その後,出力上昇試験を行ない,あわせて機器の総合調整が行なわれてきたが,43年9月,5MWの出力上昇に成功し,研究,訓練が開始された。43年度は,中性子速度弁別器を用いた単色中性子による励起核状態の研究等が行なわれた。43年9月からの運転時間は1,530時間,熱出力量は383万キロワット時である。

11 東京大学炉

 本炉は,東京大学が高速炉の核設計に関する研究および学生の教育訓練用に使用することを目的として,茨城県東海村の原研敷地内に設置しようとするもので,43年12月に設置が許可され,44年6月ごろ工事に着手する予定である。本炉は,濃縮ウラン空気冷却高速中性子炉で,熱出力は最大2キロワットである。


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