§3 試験炉

1 動力試験炉

 原研の動力試験炉(JPDR)は,38年10月,わが国ではじめて原子力による発電に成功して以来,運転経験の蓄積,各種炉特性の解析および国産試作燃料の照射試験等が行なわれてきた。
 43年度は,4月から5月中旬にかけて運転され,この間,人工欠損燃料による破損燃料からのFP放出に関する試験,新計装燃料による炉内熱出力特性の測定,国産インコアーモニターの特性測定,ワイヤ照射による中性子束分布測定,原子炉過渡応答特性実験等が行なわれ,また,日本原子力発電(株)との契約のもとに,同社の敦賀発電所運転要員の訓練が行なわれた。
 5月中旬以降運転を休止し,燃料や制御棒などを炉心から取出し,11月中旬までヘアクラックの発生に関して原子炉圧力容器の全面的な検査が実施された。検査には,ボロスコープ法,スメックゲージ(電気抵抗)法,超音波探傷法および液体浸透探傷法が採用された。この結果,圧力容器内面クラッド部の一部にクラックと見られる傷が検出されたが,いずれも比較的浅く,母材まで到達しているような欠陥はないと判断された。これらの検査結果は,42年度以降からすすめられているJPDRの変更に関する安全審査部会へ審査のための重要データとして提出された。
 JPDRの炉心平均燃焼度は約4,000MWD/tに達しているので,燃焼による炉心の炉物理特性の変化を詳細に測定するため,炉内検査終了後,12月から2月上旬まで炉物理試験が行なわれた。その後,全燃料を炉心に復旧する作業に入り,また,3月中旬からは,原子炉系の定期検査が行なわれ,各機器系統の点検保守作業が実施された。
 これらのため,JPDR-II計画については,42年3月以来,安全審査がすすめられているが,43年度中には結論を得るにはいたらなかった。

2 材料試験炉

 原研の材料試験炉(JMTR)は,動力炉の国産化に資するため,原子炉材料と燃料の各種照射実験を行なうことを目的として,設置され,43年3月臨界に達した。
 43年度は,零出力から5万キロワットまでの出力上昇試験が行なわれる予定であったが,炉プールおよびカナルの水の漏洩にかかわる補修工事に時間を費し,出力上昇は計画どおりには運ばれなかった。その他の関連工事として,ホットラボに関する工事は建屋がほぼ完成に近づき,セルについては全セル数8セルのうち6セルのコンクート打込み作業を終了し,マニピュレーターについては工事検査中であり,のぞき窓の遮へいガラスについては製作,検査を継続中という段階にいたっている。
 なお,JMTRに設置される照射ループ(OWL-1)については,現在,炉内照射管,1次2次冷却系,補助供給系の製作検査が終了し,今後,制御関係機器の製作検査を行なう段階である。また,第2号照射ループ(OWL-2)については設置が許可され,製作に着手する運びとなっている。同2号ループは,1号ループの熱出力が200キロワットであるのに対し,熱出力1,250キロワットとなっており,燃料体モックアップ試験を行なうにあたってより有効な実験を行なうことが可能である。


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