§2 海外における原子力開発利用の動向
1 原子力発電の進展

 原子力発電については,技術進歩にともなって,その経済性と安全性の向上がはかられてきた結果,世界の1968年(昭和43年)末の発電用原子炉は,78基,総電気出力1,166万キロワットに達し,建設中,計画中のものを加えると224基,1億274万キロワットとなっており,発電量は飛躍的に伸びつつある。((第1-3表))

 世界における原子力発電の開発は第1-4表に示したとおり,運転中の原子炉については,総電気出力1,166万キロワットのうち,ガス冷却炉によるものが576万キロワット(49パーセント)と,ほぼ全発電規模の半分をしめている。これは英国,フランスにおいてそれぞれ402万キロワット,132万キロワットの発電が同型炉によって行なわれているためである。また,運転中の軽水炉の総電気出力は389万キロワット(33パーセント)となっており,このうち,アメリカ,ドイツがそれぞれ191万キロワット,78万キロワットでその大半をしめている。
 また,建設および計画中の原子炉の総電気出力は9,109万キロワットとなっており,これを炉型別にみると,軽水炉7,316万キロワット(80パーセント),ガス冷却炉891万キロワット(10パーセント),重水炉704万キロワット(8パーセント)等となっており,軽水炉による発電が著じるしく増加している。これは,とくに米国において6,209万キロワットの発電が軽水炉によって計画されているほか,ドイツ,日本,その他の国々においてこの炉による原子力発電所の建設計画が飛躍的に増加したためである。
 一方,ガス冷却炉については,英国,フランスがそれぞれ614万キロワット,162万キロワットの開発が計画されており,とくに英国では,今後,改良型ガス冷却炉(AGR)がその中心炉型となるものとみられている。また,フランスにおいても,同国が独自に開発した天然ウラン黒鉛減速炭酸ガス冷却炉を中心に原子力発電の開発をすすめてきたが,同炉については経済性の面での欠陥が指摘され,今後の開発に問題を投げかけている。このため,フランスにおいても軽水炉開発への関心が高まりつつある。
 また,重水炉については,カナダにおいて天然ウラン重水減速重水冷却型炉(CANDU)の開発がすすめられ,すでに稼動中の原型炉25万キロワットを含め,1979年(昭和54年)までに運転開始を目途として,この炉型により,,総計600万キロワット以上に達する原子力発電所の建設が計画されている。
 さらに,カナダでは,この炉型の輸出にも力をいれており,すでに,インド,パキスタンに計3基(53万キロワット)が輸出された。
 このほか,ドイツにおいても,重水炉の開発がすすめられており,1968年2月,アルゼンチンに30万キロワットの天然ウラン重水減速重水冷却炉の輸出に成功した。


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