§1 原子炉等規制法の一部改正

 原子力開発利用をすすめるにあたっては,その安全性を確保することが不可欠である。このため,従来から原子力関係の施設等については,「核原料物質,核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)により適切な規制の実施に努めてきた。
 最近,原子力発電の進展にともなって,核燃料の加工事業が具体化されつつあり,また核原料物質を原材料として使用する工業が増加しつつあるなど,わが国の原子力開発利用は一層本格化,多様化してきた。このような事態の進展に対処し,十分な安全性を確保するため,科学技術庁原子力局では,昭和42年8月から原子炉等規制法の改正について慎重に検討を行なった。
 この結果,新しい事態に即応するための法改正を行なうほか,原子炉等に関する規制の合理化をはかるために所要の規定の整備を行なうこととし, 43年3月,同法の一部改正法案をとりまとめ,国会へ提出した。同法案は,5月15日,可決成立し,5月20日,公布された。
 今回の主要な改正点は,次のとおりである。
(1)本格的な加工事業が現実に行なわれる段階にいたったことに対処し,加工事業者が加工施設の工事に着手する前に,加工施設に関する設計および工事の方法について内閣総理大臣の認可を受けねばならないこととするとともに,実際の工事が認可どおり行なわれているかどうかを確認する施設検査制度を設けた。
(2)核燃料の加工,再処理の事業において,核燃料の取扱いに関する安全確保をはかるため,これら事業者に対し,核燃料取扱主任者の選任を義務づけた。
(3)最近,タンタル,イットリウムの製造業者が増加しているが,これらの工場で使用される原鉱石には,ウラン,トリウムが相当含まれているので,これら工場の内外の安全確保をはかるため,これらの事業者に対し,核原料物質の使用の届出の義務を課すとともに,一定の技術基準にしたがって使用すべきことを義務づけた。
(4)以上のほか,原子炉規制において施設検査と性能検査を一本化するとともに,日本原子力研究所(原研),動力炉・核燃料開発事業団(動燃事業団)に対する原子炉等規制法上の特別措置を廃止するなど,規定を整備した。
 なお,今回の改正においては,核燃料の民有化を行なっても,現行の規制体制で十分対処できるので,これに関連する改正はとくに行なわれなかった。


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