§4 核燃料政策の具体化

 わが国の原子力開発を円滑に推進するためには,核燃料の低廉かつ安定な供給を確保するとともに,その有効利用をはかることがとくに重要である。
 このため,原子力委員会は,42年4月に改訂した「原子力開発利用長期計画」において,核燃料の確保のための措置を講ずるとともに,わが国に適した核燃料サイクルを確立する必要があるとし,その基本的な考え方を明らかにしたが,42年度は,ひきつづきその具体化をはかり,今後の原子力開発利用の一段の発展に資するため,関係各界および学識経験者からなる核燃料懇談会を開催した。同懇談会は,42年6月から約10ヵ月間にわたって審議を行ない,43年3月,その報告書を提出した。その後,原子力委員会は,同懇談会の報告にもとづき,今後の核燃料政策について,検討をすすめていたが,43年6月,海外ウラン資源の確保,ウラン濃縮,使用済燃料の再処理,プルトニウムの有効利用,核燃料サイクルに関する試算,核燃料の民有化にともなう措置および核燃料に対する保障措置の適用について,今後の核燃料政策の方向を示した。
 核燃料の所有方式については,原子力委員会は,41年9月,日米原子力協力協定の改訂にあたり,特殊核物質の民間所有を認めることとし,安全保障措置等,必要な国内環境の整備をはかるとともに,濃縮ウランの購入の取引きを民間が直接行ないうるよう必要な措置を講ずる方針を決定した。この方針にもとづき,政府は41年10月の閣議で,遅くとも43年11月末までに特殊核物質の民間所有を認めることとした。その後,政府は,この方針にそって,日米協定の改訂交渉をすすめていたが,原子力委員会は,新日米協定が43年7月10日に発効したことにかんがみ,7月15日以降,特殊核物質の民間所有を認めることとした。
 ウラン資源の確保については,ひきつづき国内資源の把握につとめた結果,この1年間に267万トン(U308換算1,689トン)の埋蔵鉱量(可能鉱量を含む)の増加をみた,一方,海外ウラン資源については,上記の日米協定において,濃縮ウラン161トン(ウラン-235量),プルトニウム365キログラムの供給枠を確保したのをはじめ,電力業界は軽水炉用ウランの原料として,カナダと約1万4,000トン(U308)の長期購入契約を行なった。また,海外のウラン探鉱についても,42年度から三菱金属鉱業(株)が,カナダのリオ・アルゴム社と米国で共同探鉱を開始したほか,43年4月からは電力業界と鉱山業界が協力して,米国のカー・マギー社とカナダで共同探鉱を行なうこととなった。さらに,海外のウラン鉱業事情調査のため,42年度は,動燃事業団から,カナダ,中南米,米国,オーストラリアヘ,また日本原子力産業会議から米国,カナダに,それぞれ調査団が派遣された。
 プルトニウムの研究開発については,かねてから原研と動燃事業団は,発電用原子炉の新燃料としてプルトニウム燃料の共同研究開発をすすめていたが,43年5月,その試作に成功し,ノールウェーのハルデン炉で照射試験を行なうこととなった。このほか米国のエンリコ・フェルミ炉において照射試験を行なう準備がすすめられている。
 加工事業については,原子力発電の進展にともない,核燃料の需要見とおしが明確になってきたことなどから,42年までに6社から加工事業の許可申請が提出されている。一方,原子力委員会は,加工施設の安全性の審査指針作成のため,41年8月,加工施設等安全基準専門部会を設置したが,同部会は42年5月,「加工施設の安全審査指針」を作成し,原子力委員会に報告した。
 また,使用済燃料の再処理については,原研の再処理開発試験室で,43年3月以来,JRR-3の使用済燃料を使用して,再処理試験を行なっていたが,43年5月,独自の技術により,わが国としては初めてプルトニウム-239の抽出に成功した。また,動燃事業団では46年度完成を目途に,再処理工場の建設計画がすすめられている。


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