§5 米国原子力潜水艦ソードフィッシュ号の佐世保港寄港にともなう放射能調査
3今後の対策

原子力委員会は,以上の専門家検討会の報告をもとに,米国側専門家の米国政府への調査報告書をも参照しつつ,検討を行ない,5月29日,「専門家検討会の質問に対し,米国側からはソードフィッシュ号からの放射性物質の放出は全くない旨の確言は与えられたが,そのことを実証するデータは提出されなかったので,同検討会においても,本件の原因を科学的に解明することができず,疑を残したまま報告書が提出されるに至ったことは甚だ遺憾である」が「このような事情にかんがみ,当委員会としては,本件の原因の調査はこれをもって打切らざるをえない」と考え,さらに次のような見解を政府に対し申し述べた。
 「しかし,このままでは国民の不安は解消されないので,これを除去するためには,今後,次の点が確保されるよう.に政府において善処すべきである。
(1)原子力軍艦の,わが国寄港中は原子炉の1次冷却水が艦外に放出されないこと。
(2)  1次冷却水以外のあらゆる系統からも放射性物質が排出されることのないよう,従来より一層その管理が厳重になされること。
(3)原子力軍艦の寄港中は,米国側においても環境モニタリングを行ない,必要に応じ測定結果がわが方に提示されるようにすること。
(4)わが国の放射能調査体制の整備強化をはかり今回のごとき事例に対しても原因の解明に役立つようにすること。」
 政府はこの原子力委員会の見解にもとづき,上記(1),(2),(3)の事項については,米国政府に対し申し入れを行なった。また(4)の事項については,「原子力軍艦の本邦寄港にともなう放射能調査の整備方針」を定めるとともに,総額5,335万2,000円を予備費から支出し,現地調査体制の充実,測定分析機器の増強,測定結果の解析機能の強化および連絡,発表体制の整備等放射能調査体制の整備強化をはかることとした。


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