§1 国際機関との協力
1国際原子力機関

(1)第11回総会
 わが国は,原子力平和利用に関し,常に世界各国との密接な協力に努めているが,とくに,国際原子力機関(IAEA)には,創設以来,理事国として積極的に参加し,協力している。
 IAEAの第11回総会は,42年9月,ウイーンで開催された。
 本総会は,核兵器の不拡散に関する条約草案が国連18カ国軍縮委員会に提出されてから,初の総会であったため,大多数の代表から,IAEAの核拡散防止に関する役割の重要性および原子力平和利用におけるIAEAの立場の重要性が強調された。
 わが国代表は,本総会の一般演説においてIAEAは,動力炉の技術情報に関し重要な役割を果すべきであること,開発途上国における,原子炉の立地の問題について勧告すること,プルトニウム供給に関し,仲介の役割を果すことを考慮すること,ウラン,トリウム資源調査を一層拡大すること,廃棄物の海洋投棄を総括的に検討して基準設定に必要な研究を開始すべきこと,核爆発平和利用についても検討を開始すべきこと等を提案した。
 なお,本総会で承認されたIAEAの1968年度経常予算は1,047万7,000ドル,運営予算は253万5,000ドルであり,そのうち,わが国の経常予算の分担金は,25万3,071ドル(分担率2.49%)任意拠出金は4万9,800ドルである。
(2)IAEA主催国際会議
42年度に,IAEAが主催した国際会議のうち,わが国は,シンポジウムに9回,24名,パネルに11回,24名,訓練コースに5回,5名,コンサルタント会議に1回,1名,その他の技術関係の会議に1回,20名,合計27回の会議に74名が参加した。
 これらの会議のうち,原子炉耐震設計パネルは42年6月,東京で開催され,また研究炉利用地域専門家会議は,42年10月,原研東海研究所で開催された。
(3)IAEAのフェローシップおよび研究契約
42年度,IAEAによるフェローシップは,283名に適用されたが,このうち,わが国は主として,東南アジア地域から10名の研修生を受け入れた。
 IAEAによる研究契約のうち,わが国には,42年度,8件交付されたが,このうち新規は1件であり,更新がコストフリー2件を含め7件であった。IAEAの研究契約は,近年,開発途上国に対する交付が増加しており,先進国に対しては,コストフリーの契約が増える傾向にある。なお,42年度にわが国が行なった研究契約には,放射線の利用および障害防止に関するものが多い。
(4)IAEAの保障措置
 イ 核燃料転換加工施設への適用43年2月の理事会において,IAEAの保障措置の核燃料転換加工施設への適用が承認されたが,保障措置の適用をうけている核物質とうけていない核物質のブレンディングに関し,なお検討する必要があり,43年5月にさらにワーキンググループで検討し,修正があれば43年6月の理事会で検討することとなった。
 ロ IAEAの対日保障措置の実施
 わが国は,米国,英国およびカナダとの間の原子力協力協定にもとづき,保障措置を受けているが,42年度の実施状況は,(第11-1表)のとおりである。

(5)国際原子力情報システム
 IAEAでは,原子力関係情報の国際的交流を促進するため,国際原子力情報システム(INIS)を設立することとし,現在その準備がすすめられている。本計画は,1970年(45年)から,本運営に入る予定であり,このため1968年(43年)からその具体化の一環としてパイロット・プロジェクトを実施することとなっている。わが国としても,研究開発の効率的推進をはかり,また,情報活動における国際協力をすすめるため,このINIS計画については,積極的に参加することとし,すでにワーキンググループに専門家を派遣する一方,国内体制の整備をすすめている。


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