第3章 原子力発電

§2 日本原子力発電(株)東海発電所

 わが国最初の実用規模の原子力発電所である原電の東海発電所は,34年着工され,40年5月には臨界に達し,以後,完成出力16万6,000キロワットによる運転を目標として,出力上昇試験が行なわれてきた。同発電所は,天然ウランを燃料とし,黒鉛減速炭酸ガス冷却のいわゆるコールダーホール改良型炉を採用しており,英国ゼネラル・エレクトリック・サイモン・カーブス(GEC)社より輸入したものである。出力上昇の過程で,熱交換器の蒸気管(低圧過熱器)に発生する蒸気洩れ,振動などの故障等のため,40年度には,出力8万3,000キロワットで発電が行なわれた。
 40年度から41年度の初めにかけて, これらの故障に対する各種の対策を実施し,また,その効果を測定する器具の取り付け作業等を行ない,整備がすすめられてきた。
 41年6月,電気事業法にもとづく通商産業省の検査を受け, 出力上昇試験を行なったが,冷却系のガス循環器速度毎分800回転(全出力時回転数は毎分1,200回転)までは安全に運転できることが確認されたが,それ以上の回転数については,測定装置の故障(ストレインゲージ)等もあって,安全性の確認が得られず,結局ガス循環器速度毎分800回転以下,電気出力12万5,000キロワット以下という条件で,発電所の営業運転が認められた。
 その後,電気出力約11万キロワットで営業運転がつづけられたが,10月末より,12月初めにかけて発電所を全停し,熱交換器の振動対策の補強,最大出力運転の安全性を確認しうる測定器具の取付け等の補修を行なった。
 この結果,42年2月には,試験的に全出力16万6,000キロワットの発電に成功したが,その後,タービン復水器の漏洩,タービン入口低圧蒸気加減弁等の故障が発生したため,全出力連続運転に対する官庁試験を行なうにいたらなかった。
 これらの故障はすべて原子炉以外のタービン等の部分に発生しているものであり,原子炉部分の技術的な欠陥ではない。
 なお,タービンの蒸気加減弁に関する風洞実験を英国において行なうなど,故障に対する検討がすすめられており,これらの検討結果にもとづきその補修を行なったうえ,42年度には,全出力運転が行なわれる予定である。


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