第5章 原子力施設の安全対策
§7 地帯整備

 原子力委員会は,37年以来,原子力施設地帯整備専門部会を設置して,東海地区における原子力施設地帯の整備の方針について検討を行なわせ,39年12月その答申を受けるとともに,40年6月その答申にそって,茨城県が科学技術庁の委託により作成した東海地区原子力施設地帯の整備計画に関する調査の報告を受けた。
 原子力委員会は,これらについて慎重に検討を加えたが,原子炉施設の設置は,その施設に付随する安全防護施設との関連において,周辺の環境に対する安全性に関し,原子炉安全専門審査会等の専門家によって十分審議された結果にもとづくものであるので,現段階における原子力に関する専門的知識,経験によって判断する限り周辺の住民の安全に支障を与えるものではなく,原子炉の設置以後に環境の整備を行なうような事態は通常考えられないとの結論に達した。しかしながら,東海地区は,原子力の開発利用に関する国の施策の進展にともない,原研等の事業所に多数の原子力施設が設置され,これらに従事する技術者等も約2000人の多数に達するが,これらの施設のいずれかについて,万一の原子力事故を考慮すれば,研究所等における技術者の安全を予め配慮しておく必要があるのみならず,同地区は,首都圏整備地区に接続し,将来にわたり周辺に人口の増加が予想される情勢にある。かかる特殊な事情を考慮すれば,東海地区に限りとくに原子力施設に隣接するに適した環境を現段階において整備しておくことが適切であると判断した。40年8月東海地区原子力施設地帯整備についての基本方針を決定するとともに,有線放送,道路整備,公園等の諸施設の建設整備計画について検討を加え,総事業費約18億円,国庫負担金約12億円をもっておおむね5カ年で,これを推進することとし,その初年度として,東海地区原子力設備費総額1億3000万円を,周辺の道路の整備および有線放送施設費として計上した。


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