§2 わが国の原子力開発の概況

2.動力炉の開発

 わが国におけるエネルギー政策のうえから,将来の原子力発電の占める地位はきわめて高く評価され大きな期待が寄せられている。発電用動力炉の開発は,原子力開発利用長期計画の方針にそってすすめられてきた。すなわち,すでに諸外国で開発され経済性もある程度実証された炉型については,その国産化技術の開発を主として民間に期待している。長期計画の後期に実用化が期待される国産新型動力炉および核燃料サイクルからみて理想的なものと考えられる高速増殖炉については,その研究開発を日本原子力研究所を中心としてすすめてきた。
 これら一連の動力炉の開発のうち,国産新型動力炉の開発計画については,38年6月の原子力委員会の決定にもとづいて日本原子力研究所において重水減速型炉の検討がすすめられた。しかし,その第1段階である最適の冷却方式選定の作業にあたり,原子力委員会決定に指示された要件を満たす単一の炉型をえることが困難であって,容易に結論がえられずゆき悩んでいた。
 他面たまたま,第3回原子力平和利用国際会議において,原子力発電の実用性があらためて高く評価され,各国がそれぞれ独自の開発計画にもとづいて意欲的に動力炉の開発をすすめている最新の状況が明らかとなった。
 原子力委員会は,これの事情を考慮し,前述した一連の動力炉開発の在り方についてあらためて検討を加えることとし,39年10月,動力炉開発懇談会を発足させた。懇談会は,これまでの経過にこだわらずより高い立場で議論をすすめ,すでに諸外国で開発され経済性もある程度実証された炉型の国産化およびこれの改良,新型転換炉の取り上げ方,高速増殖炉の研究開発のすすめ方,核燃料政策のあり方ならびに政府,日本原子力研究所,学界,産業界などの役割などについての問題を検討している。
 原子力委員会は,懇談会の結論をまって,わが国の動力炉開発について新しく方針を決定する予定である。


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