II 原子力委員会の計画および方針

7.原子力第一船開発基本計画

(昭和38年7月31日
原子力委員会決定)

 昭和36年2月本委員会が策定した原子力開発利用長期計画に従い,原子力船の開発を総合的かつ効果的にすすめるため,昭和38年度より原子力第一船の開発を行なうものとする。
 開発の実施にあたっては,日本原子力船開発事業団を中心として一貫した責任体制のもとに,資金,人材のみならず,研究開発の面においても広く官民の協力を求め,事業の円滑かつ効率的な推進をはかるものとする。
 開発をすすめるにあたっての基本方針および事業の大綱は次のとおりとする。

I 基本方針
(1)原子力基本法の精神が充分生かされるようつとめるものとする。
(2)資金,人材の面において関係試験研究機関および産業界の協力を求め,計画の円滑な推進をはかるとともに広くわが国の原子力船に関する技術の向上を図るものとする。
(3)原子力第一船の設計と建造は,搭載する原子炉も含めて可能なかぎり国内技術によって行なうものとする。
(4)原子力第一船の安全性の確保については慎重に検討し万全を期するものとする。
(5)関係試験研究機関と密接な連携を保ち,研究開発を効率的にすすめるものとする。

II 事業の大綱

(1)船種および船型
原子力第一船は,総トン数約6,000トン,主機出力約10,000馬力程度とし,海洋観測および乗組員の養成に利用できるものとする。
(2)搭載する原子炉の型式
搭載する原子炉は軽水冷却型とするが,特に舶用炉としての適応性に重点を置いて慎重に検討の上決定するものとする。
(3)計画の所要時間
本計画は昭和38年度より開始し,昭和46年度末までに終了するものとする。
(4)設計および建造
原子力第一船の設計および建造にあたっては,原子炉をはじめとする原子力プラントの設計製作に必要な試験研究もあわせ行ない,原子炉の臨界までに約5年,その後慣熟運転完了までに約2年を見込むものとする。
(5)実験航海
原子力第一船の慣熟運転完了後,実際の航海条件の下における諸試験を行なうため,約2年間実験航海を行なうものとする。
(6)乗組員の養成訓練
原子力第一船の乗組員の養成訓練については,日本原子力研究所,放射線医学総合研究所等における基礎課程の講習,建造過程における工場実習およびでき得れば外国原子力船による乗船実習等の訓練を行なう。養成訓練は計画の3年度からはじめて試運転前に完了するものとする。
(7)付帯設備等
原子炉施設に付帯する燃料交換用の設備および機器等については,各種の方式について技術および経済上の見地から最適の方式を検討し,計画期間中に整備するものとする。
(8)計画の事後処理
本計画の終了後,原子力第一船は適当な機関に譲渡し,前記事業団は解散するものとする。


目次へ      2.8.アイソトープセンターの設置についてへ