昭和38年版
原 子 力 白 書 昭和39年7月
原子力委員会
はしがき 原子力は,新しいエネルギー源として,また,放射線として,その直接的利用効果は極めて大きい。さらにその開発利用を通じて在来技術に大きな刺激を与え,技術水準の向上をもたらす等の間接的効果もまた大きいものがある。
資源に恵まれないわが国が,今後開放経済下において先進諸国に伍して行くためには,エネルギー源としての利用を中心に原子力の開発利用を強力に推進する必要があることは多言を要しない。
昭和38年度においては,多年建設に努めてきた日本原子力研究所の動力試験炉がわが国における原子力による初発電に成功し,原子力の平和利用上一時期を画したほか,日本原子力船開発事業団の発足,放射線化学研究を主任務とする日本原子力研究所高崎研究所の開所等わが国の原子力の開発利用史上記念すべき出来事があった。
他方,昭和38年8月の核実験停止条約の署名に象徽される世界情勢の緩和は,原子力の平和的利用のための国際機関の活動なちびに2国間協力を促進助長するにあずかって力があった。
このときにあたり,世界の大勢に照らしつつわが国の原子力開発利用の跡を顧みることは,十分意義のあることと思うので,ここに昭和38年度を中心とする第8回原子力年報を公刊することとした。
昭和39年7月
国務大臣 原子力委員会委員長 愛知 揆一
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