第3章 核燃料・材料および機器等
§3 機器

(1)圧力容器

 日本原子力発電(株)東海発電所の圧力容器は,直径約18メートルの球形圧力容器で,厚さ80ミリメートルないし92ミリメートルの鋼板を溶接して組立てられたものである。この圧力容器は,材料から組立てまですべて国内技術によってまかなわれた。38年6月に溶接部の残留応力除去のための焼鈍作業が行なわれ,39年1月に空気による圧力試験が行なわれた。
 最近,炉の出力規模が増大化し,建設現地で圧力容器を溶接して組立てる場合が多くなりつつあるので,38年度にも前年度にひきつづき,ガス被包式自動アーク溶接法をもちいた溶接作業法の研究が,民間企業で行なわれた。
 ステンレス鋼の圧力容器製作法として,新たに渦巻式多層工作法の研究が民間企業で行なわれている。この方法による試作模型容器について水圧試験を行なった結果,普通の単層容器と同等以上の耐圧力を有することが確認された。
 圧力容器の漏洩防止に関する研究が民間企業において行なわれた。この成果の1つとして,ステンレス鋼製の〇-リングをパッキングに用いた場合に,ボルト締付け力を決める条件の目安が得られた。また,圧力容器の溶接個所の微少漏洩に対し,主として容器温度および圧力がどのように影響するかの研究も民間企業において行なわれている。
 船舶技術研究所は,4000トン引張試験機を38年度に完成し,日本原子力発電(株)東海発電所の圧力容器用鋼材で作成した溶接試験片について,同試験機を用いて引張試験を行なった。

(2)蒸気発生器および配管系等

 原子炉用蒸気発生器のチユーブとチユーブシートの新しい溶接法として,管孔内に溶接トーチを挿入して行なう内部溶接法が民間企業で研究されている。
 また,そのためのミクロトーチ装置も開発された。この溶接法を採用すれば,従来の拡管法よりも放射性物質等の漏洩を非常に少なくすることができる。
 軽水型原子炉配管系は,本質的には火力発電所のものとほとんど同じであるが,一層高い安全性が要求される。配管系の耐震設計の考慮は,単に地震時ばかりでなく,応力腐食が放射線照射下の条件で顕著になることからも重要であって,民間企業および大学において研究が行なわれている。
 軽水炉の循環ポンプについては,軸封部からの漏洩を極力少なくする必要があるが,これは技術的に最も困難な点である。この漏洩防止に関してメカニカルシールおよびフローテングリング式についての研究が,民間企業において行なわれた。すなわち,軸スリープの材料の選択,隙間寸法と漏洩流量との関係および抵抗係数等の解析が行なわれた。

(3)計測制御装置

 放射線検出用に適した半導体およびガラスについての研究が,大学,民間企業,国立試験研究機関で行なわれている。半導体検出器は,小型で,特別の高圧電源を必要としないことなど多くの利点があるが,特性の“むら″と耐用寿命にまだ問題があって,それらの解明のため研究が行なわれている。
 半導体検出器はアルファ線等の荷電粒子に対しては,高い検出効率を有しているが,ガンマ線に対しては低い。この点を逆に利用して,ボロン10やリチウム6のような物質と半導体検出素子をあわせ用いれば,N/γの値の小さい優れた中性子検出器を製作しうる可能性があり,これに関する研究も民間企業で行なわれている。
 半導体検出器とならんで,ガラス線量計の研究が行なわれている。これは大線量の測定に適しているが,低線量の測定にも適したものを開発するため,銀活性リン酸ガラス等が民間企業で研究されている。
 検出器等の電子部品の動作特性が,放射線照射によってどのような影響を受けるかについての研究が,主として民間企業においてJRR-2を用いて行なわれている。
 原子炉計装については,装置のトランジスタ化磁気素子の採用および半均値回路方式の利用等によってコンパクトで耐久性の優れたものが得られるので,この種の研究が原研,国立試験研究機関および民間企業において行なわれている。材料試験炉(JMTR)の計装はほとんど全部がトランジスタ化されることになっている。また,原子炉の計算機による自動的起動に関する研究が,民間企業を中心として行なわれている。


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