第3章 核燃料・材料および機器等
§1 核燃料

5.プルトニウム,ウラン濃縮

(1)プルトニウム
 プルトニウム燃料の開発は,燃料サイクルの基盤ともなるべき問題であるので,原子力委員会は,さきに原子力開発利用長期計画において,その開発を強力に推進するとしている。
 37年9月原子力委員会は,この研究開発の指針を得るため,プルトニウム調査団を米国に派遣して海外の情勢をつまびらかにした。さらに,38年5月プルトニウムの熱中性子炉または高速中性子炉の燃料としての利用計画の策定のため,プルトニウム専門部会を設置し,原子力発電の開発にともない生成するプルトニウムの核燃料としての利用に関する計画策定に必要な事項について諮問し,次の事項について検討を行なわせることとした。
① プルトニウムの熱中性子炉燃料としての利用に関する考え方
② プルトニウムの高速中性子増殖炉燃料としての利用に関する考え方
③ プルトニウムに関する研究開発の方向とその実施方法
 これらの事項について,専門部会は熱心に検討中である。
 プルトニウムの研究施設としては,37年度着工した原研のプルトニウム特別研究室の増設が,38年度に完成した。また,燃料公社のプルトニウム燃料研究施設の建設は,燃料公社が米国ニューメック社(NUMEC)に依頼した設計にもとづき,38年度から建設が開始された。
 研究としては,原研においてプルトニウムの溶液化学的研究等基礎的研究を行なっている。
 燃料公社ではプルトニウムを入手するまでの間,プルトニウム燃料加工工程への適応条件を検討するため,当面,ウランのみによって各種研究をつづけている。
 要員の訓練については,原研のプルトニウム特別研究室において,燃料公社,原研共同で行なっている。

(2)ウラン濃縮
 従来,理化学研究所を中心として行なわれてきた遠心分離法の研究は,37年度から燃料公社がこれをひきつぐことになった。
38年度に燃料公社は遠心分離法に関する理論的考察,すなわち,軽ガスを混合した遠心分離の際の拡散速度について予備的研究を行なった。
 理研から燃料公社に移設した遠心分離の建屋は,38年9月に完成し,ひきつづき1号機により基礎実験を行なった。
 また,2号機の改造は39年2月完成し,4月中旬から試運転を開始した。
 原研および燃料公社は,イオン交換法による濃縮に関する研究をひきつづき行なっている。


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