第1章 総論
§2 わが国の原子力開発の概況

3.国際協力

 わが国は,原子力の平和利用を推進して行くに当たって,米国,英国等先進国との間に2国間協定を締結し,原子炉,核燃料等の受入れ,情報の交換等を行なうとともに,世界の原子力の平和利用推進の中心である国際原子力機関(IAEA)にその設立当初から加盟し,同機関の行なう諸活動に積極的に協力している。わが国の原子力平和利用における国際協力の38年度の主要な動きは,次のとおりである。
 最近における世界の原子力平和利用の動きの中で国際原子力機関の活動が活発化してきたことに対応し,わが国は,38年度は,とくに同機関に対する協力を強化した。
 わが国は,日米原子力協定に対して国際原子力機関の保障措置を適用することとし,そのための協定が,38年9月,日本,米国および同機関との間に締結された。同機関の主要任務の1つである保障措置の実施を2国間協定の当事国が全面的に受け入れたのは,世界においても初めてのケースで特筆すべきできごとである。また,同機関は,38年2月従来の研究用原子炉を主要な対象とした保障措置制度を大型動力炉にも拡大して適用するため,保障措置規則の改正案を採択し,その後,保障措置制度の全般的再検討を開始したが,わが国は,保障措置実施がわが国の原子力利用の推進に及ぼす影響を十分に考慮しつつ,これらの決定や検討に積極的に参加している。
 また,わが国は,38年度にはじめて,国際原子力機関を通ずる技術援助の専門家をフィリッピンおよびタイに派遣したほか,39年8月から東南アジア諸国の留学生を対象に同機関と協力してラジオアイソトープの地域訓練コースを東京で開催することが決定したなど,同機関を通ずる東南アジア諸国に対する国際協力を活発化している。
 2国間協定にもとづく国際協力は,37年度からはじまった日米研究協力において新しい方向を示し注目される。すなわち,日米研究協力は,わが国が一方的に原子炉,核燃料等を受け入れるという形ではなく,相互主義の原則にもとづき,日米両国がともに関心を有するテーマについて専門家会議,ニューズレターの交換等を行なうものである。そのテーマは,39年度には従来の「酸化物および炭化物系燃料」からさらに「原子炉の安全性」にまで拡大される予定である。日米研究協力は2国間協定にもとづく国際協力の一歩前進したあり方である。
 最近,わが国における原子力の研究開発の進展にともない,増大する研究用特殊核物質(燃料用以外のウラン235,ウラン233およびプルトニウム)の需要に応ずるため,日米協定に規定された研究用特殊核物質の供給限度わくが米国側との交渉の結果撤廃され,そのための改正議定書は,39年4月発効した。


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