第1章 総論
§2 わが国の原子力開発の概況

4.放射線安全

 原子力の平和利用の進展にともない原子炉の設置および核燃料物質,放射線発生装置,放射性同位元素等の利用はますます増大し,これにともなってその安全性が一層重要となる。これらの安全性については,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律,放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等にもとづいて慎重に審査,検査等が行なわれている。
 一方,原子炉施設の安全性に関する研究,放射線障害の防止に関する研究,放射能の対策研究等が原研,国立試験研究機関,民間企業等において行なわれている。産業界,学会の協力のもとに,原子力の安全性について調査研究の実施,関係諸機関との連絡,協調,技術の普及を目的とした財団法人原子力安全研究協会が39年6月設立された。
 また,米国における原子炉安全審査の実態を調査して,わが国における原子炉の安全審査に資するため,原子力委員会は5名からなる原子炉安全審査調査団を編成して38年10月中旬,米国へ派遣した。
 なお,原子力委員会は,38年11月原子炉事故時の公衆の安全確保に関する3つの基本的目標を掲げた原子炉立地審査指針について原子炉安全基準専門部会から報告書の提出を受けたので,その報告書についてさらに検討を行ない,39年5月原子炉立地審査指針を決定した。
 さらに放射線審議会は,38年7月内閣総理大臣から放射性物質の大量放出事故に対する応急対策の放射線レベルについて諮問をうけ審議している。
 環境放射能を把握し,その対策に資するため37年度にひきつづき環境,食品,人体の放射能レベルの調査が国公立試験研究機関等において行なわれた。


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