第4章 核燃料・材料および機器
§1 核燃料

1.ウラン探鉱

 わが国で,国家的規模による本格的なウラン探鉱を行なうようになったのは,昭和29年からである。
 調査は主として,精査の前段階である概査を担当する通商産業省地質調査所と開発のための精査を担当する原子燃料公社で行なわれている。
 地質調査所では,30・31年度の両年を準備期間として,資料の収集,調査技術の確立につとめ,32年度からウラン鉱賦存の可能性のある20万平方キロメートルを対象として,エアボーン,カーボン,マンボーンによる放射能異状調査を実施してきた。37年度は,1万5,000平方キロメートルについて,これらの調査が行なわれた。37年度末までに,調査された面積は,15万5,000平方キロメートルになった。
 この調査の初期には,主として花崗岩地帯のペグマタイト金属鉱脈等の調査に主力がおかれていたが,30年11月人形峠鉱床が発見され,その規模が判明するにつれ堆積型鉱床の調査に主力が移された。
 37年度は,岡山県人形峠鉱山,鳥取県東郷鉱山,山形・新潟県境の小国(オグニ),新潟県中条,岐阜県土岐(トキ)付近,鹿児島県垂水(タルミズ)等が,重点的に調査され,とくに,土岐付近ではあらたに有望鉱床が発見され,今後の調査に期待されている。
 一方,原子燃料公社は,発足以来,地質調査所の概査のあとを受け,これらの地区の精査を行なっているが,とくに,人形峠鉱山,東郷鉱山および小国の三地区に重点をおいて実施している。人形峠および東郷鉱山は,いずれも堆積型層状鉱床で,その広がりは,人形峠の東方および北方に約150平方キロメートルにわたっている。人形峠鉱山では,坑道探鉱によって中津河鉱床の鉱況が明らかになりつつあり,とくに,38年4月南部鉱体で原子燃料公社の探鉱開始以来最高の富鉱が発見され,今後の探鉱に大きな期待が寄せられている。また,北方県境地帯で新鉱床の探査がすすめられている。一方,東郷鉱山では坑道探鉱により神ノ倉鉱床の調査がすすめられている。
 これら両鉱山の鉱石は,低品位ながら製錬しやすい特性をもち,わが国におけるウラン資源として,最も有望なものである。
 山形・新潟県境の小国地区では,中束(ナカマルケ)地区の試錐探拡が進展し,低品位ながらかなりの鉱量が見込まれている,
 これら3地区の38年4月1日現在の埋蔵鉱量は,(第4-1表)に示すとお
 りで,37年4月1日に比し約20万トン増加している。
 その他の地域では,京都府宮津地域で,極めて品位の高い露頭が発見され,地表調査および試錐探鉱が積極的に実施されている。この地区の地質構造が複雑なために,鉱床の賦存状態は不明であるが,今後の探鉱に期待されている。

 このほか,福島・山形県境の車峠付近で地表調査の結果,新露頭が発見され,ひきつづき38年度の調査が予定されている。


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