第9章 国際協力

§1 国際原子力機関の活動

 昭和32年7月29日,米英ソを含む18ヵ国の批准によって誕生した国際原子力機関(IAEA)は,年とともにその加盟国も増加し,35年末に75ヵ国であった加盟国は,36年度に新たにレバノン,コンゴの2ヵ国を加えて77ヵ国となった。
 国際原子力機関の総会は,32年10月の第1回以降,毎年9月から10月にかけてウィーンで開催されている。第5回総会も,36年9月26日から10月6日までウィーンで開催され,わが国からは三木代表以下9名の代表団が出席した。本総会で討議された25の議題のうちおもなものは次のとおりである。
 1962年度の事業計画と予算;予算額は前年度と比較して,経常予算が617万ドルから626万ドルヘ,事業予算は180万ドルから205万ドルへと増加した。((付録第3表参照))なお,経常予算に対する日本の分担率は約2%である。また日本は,事業予算に対して2万8,000ドルの拠出を行う旨誓約した
 新事務局長の指名;機関の創設以来,事務局長として活躍してきたコール氏(米)が36年11月末をもってその任期を満了するので,後任としてエクランド氏(スエーデン)を任命することが本総会で承認された。この事務局長の指名にあたっては,先に開催された6月理事会で,西欧側はスエーデンのエクランド氏を推し,アジア,アフリカグループはインドネシアのスジヤルボ氏を推し,論議の末,これら両氏の間で投票が行なわれ,エクランド氏が当選し,本総会に承認が求められたものである。


* 国際原子力機関の事業予算は加盟国の任意拠出金によってまかなわれる。

 機関憲章の再検討;機関憲章の一般的再検討は憲章第18条B項の規定により,この憲章の効力発生後の第5回目の年次総会の会期において,同会議の議事日程に記載するものとされているので,本総会の議題に載せられ,種々の論議があったが,結局,この問題については当分の間何らの措置もとらないことに決まった。
 理事国の改選;総会選出の10理事国中,本総会をもって任期終了する5ヵ国(メキシコ,フィリッピン,セイロン,ブルガリヤ,スペイン)の後任として,ハンガリー,ヴィエトナム,コロンビア,ギリシヤ,パキスタンの5ヵ国が選出された。
 理事会の構成;最近アフリカ地域からの加盟国が増大するにともない,現在の理事会の構成は,必ずしも全加盟国を公平に代表しているとは言い難いとの意見が強く,先に開催された36年4月の理事会で,総会選出の理事国を10ヵ国から12ヵ国に増加させ,このなかにラテン・アメリカからの3ヵ国アフリカ中東からの3ヵ国が必ず含められるようにする憲章改正案が提案採択され,本総会で承認された。  (この改正は全加盟国の2/3の批准を得て発効する。36年度中に批准を了したのはフィンランド,英国等の12ヵ国である)三木代表の演説;総会の一般計論で,各国代表が演説を行なったが,そのなかで,わが国の三木代表も,原子力の平和利用,国際協力を強調した。その演説中でとくに三木代表は,わが国は,原子力開発を進めつつある諸国のために,わが国の知識,経験ないし施設を提供する用意があり,この種の国際協力をますます強化する意味において,アジアにおける国際アイソトープセンターを日本に設置する用意がある旨を述べた。
 この構想については,わが国はその後種々検討を加え,機関に対して,本センターの設立および運営のために必要な援助,協力を正式に要請し,その早期実現に努めている。
 以上が総会における主要な議題である。このほか日本にとって国際原子力機関との関係でとくに注目すべきことは,36年1月の理事会で機関の保障措置規則が正式に採択されたことにともない,同年4月28日,日本がそれぞれ米国およびカナダと連名で,日米協定および日加協定に基づく保障措置の実施を機関に移管するための交渉を行いたい旨機関事務局に申し入れたことである。移管に必要な協定を締結するための交渉は,現在機関と関係国間で行なわれているが,これが実現すれば,機関の保障措置制度を軌道に乗せる上に大きな役割を果すものとして期待されている。
 なお日本原子力産業会議では,機関の技術援助活動に協力するために,総額約200万円の原子力関係機器8点を国際原子力機関に寄贈することとし,36年8月24日贈呈記念式が行われた。
 これらの機器はザイベルスドルフにある国際原子力機関の研究所に備えられている。


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