第8章 その他の研究開発
§2 原子炉材料

2−4 ジルロニウム系合金

 ジルコニウム系の合金については,主として民間企業で開発がすすめられている。すなわち,ジルカロイの改良として,融解の際に使用するアルゴン中に不純物として含まれる窒素の影響を少くするためのSn,Fe,Crなどの添加適量について研究が行なわれたほか,ジルカロイに代る新しいジルコニウム合金の開発が行なわれた,ずなわち,ジルカロイよりも高温での機械的強度が強く,かつ高温水に対する耐食性も劣らないようなものを得るため,熱中性子吸収断面積の比較的小さいSb,P,Si等を単独あるいはSnと組合せてジルコニウムに添加し,92種におよぶ合金試料の作成が行なわれた。その合金試料について,高温水に対する耐食性および硬度等の試験が行なわれたが,高温水に対する耐食性については,特に悪いものを除いては大体ジルカロイと同程度で,ジルカロイより著しく耐食性のすぐれたものを得ることはできなかった。硬度の点ではSb,Sn,P,V,Mo,Bi,Fe,Cr等が高温における硬度をかなり上げることがわかった。
 また,炭酸ガスに対する耐合金としてZr-Cu-Mo合金が用いられるが,この合金の諸性質の検討と第4成分の添加による性質改善も試みられた。他方,ジルコニウムの合金の加工関係では,溶接の問題とパイプの製造に関しては民間企業で研究が行なわれた。すなわち,ジルコニウム合金は高温で各種ガスと反応し,これによって,ぜい化や耐食性の劣化を生じやすく,高温加工,とくに溶接などを行なう場合は溶接雰囲気ガスの純度によって溶接部の特性が大きな影響を受けるので,この点について研究がすすめられた。ジルコニウム合金のパイプ製造については,ジルカロイ-2の継目なし管,溶接引抜き管の試作試験が行なわれた。その結果,溶接引抜管は溶接部に苛酷な応力のかかる機械試験では,溶接部肉厚不同から継目なし管にくらべやや劣る結果となった。しかし,耐食性などの材質検査では,全く差が認められず,溶接引抜管も冷間抽伸工程の改善により継目なし管と同程度のものを作りうるものと考えられた。この結果,外国のデータとくらべて遜色のないジルカロイ-2のパイプを作りうることがわかったが,なお,経済的製品とするには研究を要するものがある。
 ジルコニウム合金管の実使用条件腐食の挙動については,36年度から新しく民間企業で実験が開始された。これによって,溶接施工条件と耐食性の関連が明らかになるものと期待されている。


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