第8章 その他の研究開発
§2 原子炉材料

2−3 ステンレス鋼

 ステンレス鋼については,民間企業でマンガン,タンタル。コバルト等の元素を制限して,中性子捕獲断面積を減少せしめた原子炉炉心用構造ステンレス鋼が開発されたが,36年度はひきつづきこのステンレスを使用して薄肉細径管を製造する研究が行なわれ,溶接管および継目無管の試作が行なわれた。この結果いずれの場合も良好な製品が得られ,その相違点は継目無管が溶接管にくらべて寸法精度が低いことのほか,他の点では全く一致する結果を得た。またコストでは,溶接管が20〜30%安くなることもわかった。今後,炉内照射試験および薄肉細径管の非破壊試験法の確立を待って実用化を確立する段階にいたった。
 ステンンス鋼の溶接技術については,金属材料技術研究所で溶接割れの問題について鋼材および溶接棒の比較格付けが行なわれた。また,民間企業では,亀裂発生の懸念のない溶接棒として完全オーステナイト組織を得るものの研究がすすめられた。その結果,18Cr-13Ni-4Mn-Nb棒が,目標とすべき 1)機械的性質が18-8溶接金属に等しい 2)耐食性が18-8溶接金属に等しい 3)ニオブの添加が亀裂感受性に影響しない4)ラプチャー性質が347型溶接金属に等しいという条件を満足することがわかった。
 また,原子炉制御棒としてボロン入りステンレス鋼の開発も民間企業で行なわれており,ボロン添加による機械的性質の劣化は,テタン添加により軽減することおよび基質組成として17Cr-15Niが適当であるとの立脚点を得て,現場中間規模による製造研究が行なわれた。その後ボロン鋼の溶接性を解明するための研究が行なわれている。


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