第8章 その他の研究開発
§1 原子力船

1−3 世界の原子力船

 かねてより完成が待たれていた米国の原子力貨客船サバンナ号は,去る34年7月に進水して以来艤装が続けられていたこところ,37年3月に原子力による最初の試験航海が行なわれ,19〜20ノットの速度を出した。同船のピッチおよびロールは,原子炉の運転に特別な影響を及ぼさなかったと報じられている。試験航海はなお続けられる模様である。また,欧州における経済協力開発機関(OECD)の専門機関である,欧州原子力機関(ENEA)はその事業のひとつとして,原子力商船の開発を取り上げ原子力商船の経済的可能性と利用できる各種動力炉の検討ならびに原子力商船1隻の建造および運転を,ヨーロッパの共同事業として推進するための手段方法を検討している。欧州原子力機関ではすでに,加盟諸国の共同研究開発計画としてユーロケミク再処理計画(参加13ヵ国)ハルデン沸騰水炉計画(参加12ヵ国)およびドラゴン高温ガス冷却炉計画(参加12ヵ国)の3共同計画を実行しており,原子力商船の建造計画が実現すれば第4番目の共同研究開発計画となる。
 ソ連の原子力砕氷船レーニン号は,35年北極航路に就航後,最初の航海で,22,000浬(約40,000km)を走り,通常のソ連北部の航海日数を2週間短縮し,極地輸送の早さを倍加した。最初の航海のうち9,000浬(約17,000km)は氷海であったが,その間レーニン号が破砕できない氷はなかったといわれ。船の動揺に対しても,氷の衝撃に対しても原子炉は安定した機能を発揮したばかりでなく,放射線モニターも一度も警戒信号を出さなかったといわれる,その後レーニン号はムルマンスクで第2次極洋航海の準備を行なっている。原子炉部分は在来機器とともに分解点検された結果,異常は見られなかったといわれている。


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