第4章 核燃料
§2 わが国の開発状況

2−5 検査

 完成された燃料要素そのものが完全であるかどうかということの判定は非破壊検査で行なわなければならないが,原子燃料のように高度の安全性が要求され,かつ,はなはだ高価なものでは,単に最終製品である燃料要素についての検査のみでは不十分であり,不合格の場合は不経済である。
 そこで,核燃料についての検査は,単に,最終製品のみを対象と考えるのではなく,製造工程の各段階における検査も重要であり,これらを包含して考える必要がある。燃料公社は,35年に検査課を設立し,検査技術の開発研究を行なうとともに,燃料の製造履歴,工程中の検査結果が,燃料の炉内挙動にいかなる統計的意義をもっているかを調査する目的で,原子力研究所とも共同して,検査データの統計的取扱いを研究している。燃料公社では,36年3月に,東京工業大学の指数実験装置用燃料約2.5トンを民間会社と分担し製造納入したが,この検査の際に鍛造ビレットの内部欠陥検査の結果と,製品合格率の関係についても検討がおこなわれた。検査技術の向上にともない,発見される欠陥が多くなったので素材の生産過程における鍛造作業の改善努力が必要であるとともに工業的にみて,このような微細な欠陥が燃料の加工工程にいかなる影響をもつか,さらに燃料体としてその実用性に影響をもたらすかを検討し,妥当な検査基準を設定することが必要である。


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