第4章 核燃料
§1 概 況

1−3 核燃料物質の管理

 原子力委員会は33年4月「しばらくの間,民間に核燃料物質の所有を認めない」旨決定したが,当時の状況は,日米,日英一般協定の未締結,国際原子力機関による保障措置の未制定等,海外からの核燃料物質の受入れに伴う諸条件が不明確であり,国内的には,原子力損害賠償制度の欠如,不十分な経験等,開発初期段階における平和利用の保障,安全の確保に対する政府の責任上の見地および国民感情に対する考慮等の理由により,核燃料物質は,当分の間は,国または公的性格を有する機関が,所有することが適当であると考えられていた。
 しかし,その後,内外の諸情勢には,次のような進展がみられた。すなわち
(1) 核燃料物質の供給国である米国,英国,およびカナダとの間に一般協定が締結され,また,国際原子力機関における保障措置が制定されるなど,核燃料物質の受入れに伴う対外的諸条件が明確になり,整備されるにいたった。
(2) 原子力損害賠償制度が確立され,無過失責任の原則の確定,責任主体の明確化,賠償措置の確保など万一の際の被害者の保護に遺憾なきを期しうることとなった。
(3) 研究開発が進展し,原子力平和利用に関する知識経験が深められた。
(4) 対外的諸条件の整備,知識経験の深化等を基礎に[核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に所要の改正を加え,国際規制物資について国際約束履行上必要な規制措置を講じ,原子炉について定期検査,プルトニウム,使用済燃料について施設検査,保安規定の認可等の措置を加え,さらに,検査官制度の新設,記録報告の整備による核燃料物質計量管理制度の完備を図るなど,国内的に十分な規制措置が整備された。
 このような諸般の体制の整備に伴って,平和利用の保障,安全の確保に関し,十分な措置が講じられたので,原子力委員会は,36年9月,特殊核物質(濃縮ウラン,プルトニウム,ウラン-233)を除く核燃料物質については。政府の厳重な規制の下に,民間の所有を認め,民間における原子力発電等,わが国原子力産業の自主的発展をさらにすすめることとなった。
 この決定に基づき,閣議においても,9月12日,天然ウラン,劣化ウランおよびトリウムについての民間所有を認めることの閣議了解がなされた。


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